「何不自由なく育った少女」が道を踏み外した悲劇 はためには「穏やかで仕事熱心な両親」だが…

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アヤノが鉄棒から落ちて怪我をしたときのエピソードがそれを象徴しています。「今度こそお母さんは話を聞いてくれる、心配してくれる」と期待したのに、あっさり裏切られました。よほどショックだったのでしょう。アヤノは10年以上も前のこの出来事を詳細に語ってくれました。

最初に少年鑑別所に入所したときもそうです。親は面会にも来ませんでした。アヤノの問題行動をSOSとして受け止めるのでなく、「面倒なことを起こしてくれたもんだ」という反応で、ほとんど無視だったのです。

更生への道が険しい非行少年

更生がもっとも難しいと感じるのが、無関心な親に育てられた非行少年です。少年院で更生プログラムに沿って教育を受け、社会復帰に向けて頑張っても、少年院を出れば、戻るのは元通りの家です。親は相変わらず無関心。サポートしてくれません。愛情飢餓状態の子どもが、何かにすがりたいと思ったとき、すがれないのです。

そして結局、適切でないところにすがってしまう。犯罪に手を染めているグループなどです。アヤノの場合は、暴力団メンバー、半グレメンバーでした。するとまた犯罪に巻き込まれてしまいます。少年院や刑務所に戻って来ることになります。

非行少年の更生は、周囲に支えてくれる人がいないと難しい。これは私が少年鑑別所職員として少年院に出向いて「処遇鑑別」をする中でも実感してきたことです。

「処遇鑑別」とは、少年院に入院している非行少年の教育状態を評価するために行う、面接、心理テスト、行動観察といった一連の心理分析です。最初に少年鑑別所にて行った心理分析をもとに教育プログラムが作られ、少年院にて実行されていますが、一定期間が経った後にその成果を査定します。当初の教育プログラムがうまくいっているのか、修正する箇所はあるかなどを検討する目的があります。

このとき、非行少年に大きな変化があることを感じます。入院前に比べ、自分のことを客観的にとらえられるようになっています。問題に気づき、改善していきたいという意欲があります。社会復帰したらこうしたい、という気持ちが芽生えているのです。ただ、少年院を出る日が近づくと恐怖感が強くなります。「出たくない。もう少しだけここにいたい」と言う少年たちは少なくありません。

「あの親のもとに帰るのが不安」「あの環境に戻るのが心配」なのです。

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