「何不自由なく育った少女」が道を踏み外した悲劇 はためには「穏やかで仕事熱心な両親」だが…

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このときは初めて事件として取り扱われたこともあり、「保護観察処分」として自宅へ帰された。

二度目の少年鑑別所入所は、19歳のとき。覚せい剤を使用したからだった。同年代の子には馴染めなかったアヤノだが、あるとき指定暴力団のメンバーと知り合い、交際するようになった。そして、彼が持っていた覚せい剤を性的興奮を高めるために使い、逮捕されたのだ。

このときは両親が面会に来た。しかし、アヤノは面会を拒否した。

職員が両親に面接をしたとき、ふたりともよく喋った。

「何不自由ないのに」

「きちんとご飯を食べさせているし、衣服も与えている。ちゃんとした家もある」

「お金に不自由させたことは一度もない」

「子どもに虐待したことはない。干渉しすぎることもない」

「小さい頃から自主性を尊重してきた」

家庭裁判所は「要保護性が高い」、すなわち、アヤノの性格や環境に照らして、将来再び非行に走るおそれがあると判断したが、覚せい剤は常習にいたっていなかったこと、かつ、成人男性に引きずられるかたちの犯行であったことから、しばらく様子を見る「試験観察」とする決定を下した。再び、アヤノは自宅へ帰された。

その後、20歳を過ぎた頃、アヤノはキャバクラで働くようになった。ぶっきらぼうな態度が「女王様キャラ」として受け入れられ、人気が出た。

しかし、いくら店で人気が出てもアヤノの寂しさは消えない。やっと寂しさを忘れることができたのは、リントというマネージャーのおかげだ。リントはてきぱきと仕事をこなし、店の従業員に対して男女問わず平等に接する。アヤノはいつしかリントに恋心を抱くようになっていた。

体調がすぐれず、仕事を休んで寮で寝ていたとき、リントが訪ねて来てくれた。

「大丈夫か。薬を買って来たから、これ飲んでよく休むんだぞ」

アヤノは涙が止まらなくなった。嗚咽するアヤノの肩をリントはやさしく抱いてくれるのだった。

リントと親しくなると、彼も家で寂しい思いをしてきた人だということがわかった。ネグレクト状態で育ったため、社会に適応するのが難しかったという。

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