「何度も言わせるな」親に叱られ育った少女の悲劇 教育熱心な母親の言動が引き起こした結末

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親の「よかれ」と思っての言動が、思わぬ事態を招いたケースを取り上げます(写真:Mills / PIXTA)※写真はイメージです
親が「よかれと思って」実践している声かけ・子育てが子どもの未来を呪ってしまっている──。そう語るのは、元法務省でこれまで1万人の犯罪者・非行少年を心理分析してきた犯罪心理学者の出口保行氏。出口氏の最新刊『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』は、そんな実例をまとめた子育ての解説書になっている。
本記事はその中から、「何度言ったらわかるの」という言葉についての解説を抜粋。何度も注意するうちに、親はついつい言い聞かせるような口調になってしまうもの。叱る言葉、注意の言葉は工夫をしなければ呪いの言葉になってしまう。非行少年に限らず、どんな家庭でも気をつけておきたい注意点と解決策を解説する。
※本記事に出てくる実例はプライバシー等を考慮し一部改変しています。

親の誤った教育方針が導いた、ヒトミの悲劇

ヒトミは中学3年生で、高校受験を控えていました。親からは「学費がかかってもいいから、偏差値の高い高校へ行きなさい」と言われています。また、両親ともに高学歴で、勉強でも仕事でもよい成績をとることが将来の幸せにつながるのだという価値観を持っていました。

ただ、子どもに対して過度な要求をすることは良くないと知っていたのか、直接的に「ああしなさい」「こうしなさい」と言うことは控えていたようです。そのかわり、ヒトミが幼い頃から、優秀な第三者を褒めることで目標を示そうとするのでした。

「ミサちゃんは幼稚園で描いた絵がコンクールで入賞したんだって」

「ケン君は、まだ小学校入学前なのに九九がスラスラ言えるんだって」

とりわけ母親はこんな調子で、聞こえよがしに話していたそう。ヒトミをきちんと育てれば、妹と弟もそれを目標にできるだろうと思っていたので、きょうだい3人の中では長女のヒトミに対する期待がいつも大きかったというわけです。しかし、幼いヒトミは自分に対するメッセージだとは気づかず「ミサちゃんもケン君もすごいんだな〜」と思うだけでした。

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