「何度も言わせるな」親に叱られ育った少女の悲劇 教育熱心な母親の言動が引き起こした結末

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「私には価値があるんだ」

ヒトミは満足感に浸りました。後ろめたさがなかったわけではありません。しかし「付き合ってほしいという男にお金をもらっているだけ」「体を求めてこない男だっているし」などと考えて売春ではないと思おうと努めていました。が、男性の逮捕をきっかけにヒトミの援助交際も発覚。少年鑑別所に収容されることとなったのです。

自分を大事にできない子どもたち

このケースは「虞犯(ぐはん)」といって、まだ法を犯してはいないものの、環境や性格などからみて将来罪を犯すおそれがあるとみなされました。

ヒトミは極端に自信がなく、「自分が承認された感覚」を持つために援助交際に走ってしまいました。自分が求められているという心理的充足感に加え、お金ももらえるという物質的な満足感があることで、あっというまにのめりこむようになったのです。

少年鑑別所には類似のケースが山ほどあります。ちやほやされているのは単に性的な欲求のはけ口となっているからなのに、「それでもいい」と考えてしまう。

ヒトミはお金を受け取っていましたが、報酬が何もなくてもついていってしまう子もいます。そのときだけでも自分のほうを見てくれる、認めてくれると思うからです。

そして、妊娠・中絶を繰り返している子も多くいます。心にも体にも大変な傷を負っているはずです。しかし「もっと自分を大事にしなさい」と言っても「いや、別に大事じゃないし」という反応をします。自分が価値のある存在なのだ、自分をもっと大切にしていいのだと思えないのです。なんと悲しいことでしょうか。

自己肯定感が高ければ、もっと自分を大事にできるはずなのです。

自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定できる感覚のことです。他者との比較ではなく、自分の存在に価値があると認め尊重できる感覚です。良い人生を歩むための根源的な力と言えます。

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