「何度も言わせるな」親に叱られ育った少女の悲劇 教育熱心な母親の言動が引き起こした結末
ヒトミは母親からつねに誰かと比較され、暗に否定されてきました。「誰々と比べておまえは劣っている、だからダメだ」と言われ続けたようなものです。自己肯定感が低くなるのも当然です。
母親自身は、否定したつもりではなかったかもしれません。わが子への期待と、思いどおりにいかない子育てのストレスから「何度言ったらわかるの!」とキレてしまったという面もあるでしょう。しかし、もし本当に子どもを大切に思っているなら、それをきちんと言葉にして伝えなければなりませんでした。
「以心伝心。家族だから、言わなくても伝わっている」なんていうことはありません。折に触れて「あなたが元気でいてくれるだけでうれしい」「そのままのあなたを大切に思っているよ」と話すことが大事です。「何かができたから」とか「人と比べて優れているから」ではないというのが重要なポイントです。何もできなくてもいいのです。ありのままで価値があり、尊重されるべき人間だということです。
「何度言ったら」の背景にある思い込みに気づく
ヒトミの自己肯定感をむしばんだのは「何度言ったらわかるの!」という言葉だけではありませんが、この言葉が子どもの自信を失わせるのに一役買っているのは確かです。
「何度言わせるの!」
「この間も言ったでしょう!」
「いい加減にしなさい!」
親はこう言って感情を爆発させ、「何度言ってもできないおまえはダメだ」というメッセージを伝えています。親のストレス発散にはなるかもしれませんが、問題は解決しないどころか子どもの自己肯定感を下げることになります。
それでは、何度言っても子どもがわかってくれないという問題を解決するにはどうしたらいいでしょうか。まず考えたいのは、子どもがきちんと理解できる伝え方か、ということです。
ヒトミの母親は、子どもに対し過度な要求をするのは良くないと思っていました。そこで、直接、ああしなさい、こうしなさいと指示するのは控えていました。そのかわり第三者を褒めることで遠回しに「誰々みたいになりなさい」と要求していたわけです。これは母親自身にしてみれば理屈が通っているのでしょう。ちゃんと伝えているのに、わからないヒトミが悪いと思ってしまいました。
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