少年院の子はモンスター?元法務教官が見た光景 「非行」という仮面の下にある少年たちの素顔

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少年院を知り尽くした元法務教官・村尾博司氏が語る、少年院の少年たちの素顔とは。写真はイメージです(写真:Fast&Slow/PIXTA)
学校でも刑務所でもない、少年院における教育の可能性とは――? 数学を通して少年院での矯正教育に関わった数学指導者・高橋一雄氏と数学教育の専門家・瀬山士郎氏と、少年院を知り尽くした元法務教官・村尾博司氏が、それぞれの立場から「少年院における数学教育」の意味を考えた共著『僕に方程式を教えてください』。同書より一部抜粋し再構成のうえ、本稿では村尾博司氏が少年院の少年たちの素顔についてお届けします。

「東大に入るよりも難しい関門」

非行少年と言えば、かつては、眉毛を剃り落とし、斜に構えて暗がりの中でこちらをにらみながら人を寄せつけない風貌を持つ、得体の知れない「モンスター」として描かれてきたのではないでしょうか。

実際、家庭裁判所に事件が送られた者のうち、少年院の門をくぐるのは約3.6%(2019年)という狭き門です。入院して間もない少年たちにオリエンテーションをする際、「君たちは東大に入るよりも難しい関門をくぐってきたのだよ」と切り出すと、引きつった笑みを浮かべるのが常でした。

そう、望んだ場所ではないのです。入院してすぐに丸刈りにされた彼らは、どこか頼りなげな面持ちの一休さんのようで、指導する教官をこわごわと下から見上げる者が多いのです。地元から引き離され、ハリネズミのように強がって身体を張ってきたこともあるのでしょうか。

2020年度『犯罪白書』によると、家庭裁判所に事件が送られた非行少年のうち、少年鑑別所に身柄を収容される者は約12%、少年鑑別所において少年審判までの孤独な時間を過ごす彼らは、重くなった心の鎧を徐々に外していきます。精一杯強がっている表情とは真逆な素顔を見せてくることになります。

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