「甘やかされて育った少女」に訪れた恐るべき結末 習得が難しい「人の気持ちがわかる」という能力
その後、なんとか高校に進学したナルミだったが、すぐに不適応を起こし1年生のうちに退学。「家事手伝い」と称して家にいる日々だ。おこづかいは、親か祖父からもらえばいい。きれいな服を買って、化粧をして、ふらふらと出かけたり遊んだりしていればいい。
でも、ナルミは心の底では気づいていた。きれいに着飾っていても、家族以外の誰からも相手にされていないことを。ちゃんと話を聞いてくれる友だちなんていないのだ。
ところが、ホストクラブに行ったことで一変した。ここでは、お姫様扱いされる。お金さえ出せば、みんな自分の言うことを何でも聞いてくれる。ナルミにとって、素晴らしく快適な空間だった。
とくにゴウというホストは、ナルミのタイプだった。やさしくて、ナルミのことをたくさん褒めてくれる。少し頼りなげな雰囲気も好きだった。
「今月の売上、足りなくて」
ゴウがそう言うと、ナルミは数十万円もするシャンパンを注文。同伴出勤も頻繁にして、「ナルミがいないとダメだ」と思わせようとした。
「アタシに任せて」
もちろん、お金の出どころは家族である。自分でお金を稼いだことがないナルミは、執拗に家族にお金を無心した。
「この間、30万円渡したばかりじゃないか……。いくらなんでも」
父親が困ってつぶやくと、ナルミは父親を突き飛ばしたのち、リビングにあったクッションや本を手あたり次第に投げた。また始まったのだ。このところのナルミの暴れっぷりはエスカレートしていた。
「ちょ、ちょっと」
祖母が止めようとリビングに入ってきたとき、ナルミは灰皿を投げた。ガラス製の重たい灰皿だ。
ゴン。鈍い音がしたと思うと、祖母が倒れ、見る間に多量の血が広がっていった。灰皿は祖母の頭に命中していた。すぐに救急車を呼んで一命をとりとめたが、全治3カ月の重傷である。
この事件は警察に通報され、ナルミは少年鑑別所に収容されることとなった。
人は折り合いをつけて大人になる
ナルミは典型的な甘やかし家庭に育てられた子でした。とくに祖父は、ナルミがほしいものは何でもすぐに買い与え、やりたいと言ったことは何でもやらせてあげようとしています。
ダンスを習いたいと言ったら、すぐさまプロダンサーの家庭教師をつけ、家にダンスルームまで作ってしまうのだからすごいものです。しかも、ナルミがまだ幼稚園生のときです。そうした余裕があるからいいと言えばいいのですが、多くの親はもう少し様子を見ながらサポートをするのではないでしょうか?
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