久光製薬がMBOで上場廃止へ、創業家社長が露わにした「危機感」・・・株価は連日TOB価格よりも高値に、MBOの難易度増す
「サロンパス」や「モーラステープ」といった貼り薬で知られる製薬中堅の久光製薬。同社は1月6日、MBO(経営陣の参加する買収)を実施して株式を非公開化すると発表した。
TOB(株式公開買い付け)期間は1月7日から2月19日までの予定で、買い付け価格は1株あたり6082円。発表前日の1月5日の終値を35%ほど上回る価格で、PBR(株価純資産倍率)にして1.6倍ほど。
買い付け総額は3930億円となる見込みで、製薬業界では大正製薬ホールディングスの創業家による7100億円規模のMBOに次ぐ事案となる。
もっとも、同社を長年見てきた取引先や市場関係者らの多くは「とくに驚きはない」と冷静に受け止める。TOBを実施するのは中冨一栄社長(53)の資産管理会社であり、一栄社長は以前から上場し続けることに積極的ではないと見られていたからだ。MBO後も、一栄社長は続投する予定だ。
社長不在の説明会
一栄社長は江戸時代末期に創業した久光製薬創業家の6代目にあたる。サロンパスをヒットさせた3代目の中冨正義氏の孫で、医療用医薬品市場を開拓した博隆前社長の長男にあたる。両者の社長在任期間は30年以上に及ぶ。
2015年に父親から社長を引き継いだ一栄社長だが、決算説明会などで投資家の前に出ることは稀だった。MBO発表直後の1月7日に開催された投資家向け説明会にも、社長の姿はなかった。買い付け者側が登壇するのは不適切だ、というのが会社の説明だ。一栄社長は24年ごろから「経営のいち選択肢」としてMBOの情報収集を進めており、25年10月に全取締役会に意向を初めて伝えたという。
背景にあるのは、長期視点で経営する久光製薬の創業家と今の上場企業に求められる姿との間で生じていた「ズレ」だ。
東証プライム銘柄として、同社は東京証券取引所が掲げる市場改革の指針に対応してきた。ROE8%超を維持するために自己株買いを重ね、コロナ禍で業績が低迷した中でも増配を続けた。25年4月には、株主還元に5年間で500億円以上を充てると表明していた。
その結果、総還元性向(配当金支払い総額+自己株買い総額を純利益で割った割合)は足元で100%を超えている(25年2月期)。株主還元に年間200億円以上を支出している計算で、そのうちいくらかでも事業投資に振りわけるべきでは、との思いが募ったとしても不思議ではない。
自己資本比率は約8割と財務基盤は盤石な同社にとって、資本市場から資金調達する必要性も高くなかった。



















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