「路上ライブを公認!」"柏ルール"に学ぶ3つの視点 「路上ライブの聖地」と呼ばれた場所の取り組み

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柏市としては今後、「音楽の街」としてさらに盛り上げるべく、若手のミュージシャンにもどんどん参加してもらいたいと考えている。

「登録者数」と「演奏者数」の乖離問題

今、懸念されているのは、このダブルデッキを利用するミュージシャンの高齢化だ

というのも、柏に集うのは、「圧倒的に売れたい」というミュージシャンだけではない。趣味でギターを弾いている人もいれば、たまにライブハウスに出ており少し歌っているといったミュージシャンもいる。

そのため、新宿南口のように多くの「売れたい」若手ミュージシャンが来て、それを目当てにファンやカメラマンが多く集うわけでもない。

残念ながら、路上を利用するミュージシャンは同じ人たちで循環が滞っている状態にある。今年に入りミュージシャンの登録者数は増えたものの、実際に演奏している人たちはそう変わらないという乖離現象が起きている。

一長一短とはよくいったものだが、路上ライブのルールを守り堂々と演奏できる代わりに、今の柏はミュージシャンたちにとっては「売れるためのチャンス」という魅力が低くなっているのが現実だろう。

取材を通しても、多い日でも3組程度で、定期的に演奏しているミュージシャンが目立っていた

「確かに人通りが少ない日もありますし、アンプなしだと不利かなと思うこともあります。でも、生歌はごまかしが利かないので、精一杯歌って聞いてもらえるように工夫しています。そのおかげか歌もうまくなっていると思います。柏は聴いてくれる皆さんがほんと温かいです」

ダブルデッキで毎週歌っている、若手シンガソングライターの岩村柚希さんはこう話してくれた。

定期的に柏で路上ライブをやっている岩村柚希さん(写真:松原大輔)

ミュージシャンにとってより魅力的な場所とすることが今の柏の大きな課題である。

そのためダブルデッキ奥にあるステージでは「柏まちかどライブDAY」というアンプ使用を許可した音楽イベントが定期的に行われるなど、再び以前のような活気を取り戻すための取り組みが行われている。

できれば、このイベントも柏の路上で実際に演奏しているミュージシャンにとってのチャンスであってほしいところだ。

「柏ルール」を守り、定期的に演奏しているミュージシャンたちがチャンスをつかみ、大きく羽ばたくことができれば、本当の意味で「路上ライブの聖地」が再び盛り上がりを見せてくれることだろう。

*この記事の1回目:新宿駅南口「路上ライブ"禁止でも聖地"」驚く現実​
 *この記事の2回目:歌舞伎町タワー「路上ライブ開放」は超画期的だ

松原 大輔 編集者・ライター

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まつばら・だいすけ / Daisuke Matsubara

富山県出身。編集者・ライター・YouTubeプロデューサー。中央大学法学部卒。在学中より故・永谷修氏に師事。大学卒業後、講談社生活文化局にて編集見習いとなる。その後、文藝春秋『Sports Graphic Number』編集部などで編集者・記者を経て、2018年に独立。書籍の企画、編集や執筆活動、YouTubeの動画制作・プロデュース、アーティストマネジメントなどを行っている。

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