「路上ライブを公認!」"柏ルール"に学ぶ3つの視点 「路上ライブの聖地」と呼ばれた場所の取り組み

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①音量要件

音量は大きな問題だ。とくにアンプを使用した際に出る大音量。何組ものミュージシャンが演奏したときに重なった音などは、すでに曲ではなく騒音となる。

現在、「柏ルール」ではアンプの使用は禁止。音楽のみ流すカラオケはスマートフォンから出るものをギリギリOKとしている。

音量に関しては、ミュージシャン同士のほうがナーバスです。アンプを使えば隣よりも聞こえるように音量を大きくしますし、生音のミュージシャンがいても、声が届かず結果的に排除されてしまいます。柏ではミュージシャン側がむしろ生音を望んでいます

生歌だからこそ近い距離感でも歌うことができる(写真:松原大輔)

アンプ全盛の中、柏ではあえて生音を愛するミュージシャンに利用してもらえるよう呼び掛けている。

たとえば、声量自慢で生歌で勝負となると、仮に新宿南口でライブをやったとしても歌声は届かないだろう。そういったミュージシャンにとって柏はいい環境と言えるだろう。

また、スマートフォンでの音源は、ヒップホップ系やアイドルの人たちへの門戸を開放するための苦肉の策でもある。

ただ、残念ながら、ミュージシャン登録をして、アンプ禁止を知りながらもあえてアンプを使い、その動画をSNSで面白おかしくバズらせているミュージシャンも存在する。

こうしたミュージシャンに対しては、柏市や制度の運営側からも警告を行い、悪質な場合は許可の取り消しを行っているが、それ以上の法的拘束力があるわけではなく、登録者の良識に頼る形になってしまっているのが現状だ。

何か大きな罰則があるわけではないので、あくまでも利用者の良識に任せるところが大きい。

「通行を阻害するようなパフォーマンス」は断っている

②占用面積要件

そして音量以上に重要なのは、じつは「占用面積要件」となる。

路上ライブをやる場所が道路である以上、通行の邪魔にならないというのは重要な要件である。

今、柏では「2×3メートルの黄色いライン」ライブができる区画を区切っている。

路上ライブができる指定の区画には「2×3mで黄色のライン」がひかれている(写真:松原大輔)

「大前提として、路上は多くの人が利用する道路であるということです。これをミュージシャンには理解してほしいと思います。そのうえでさまざまな検証をしてきましたが、今の2×3メートルが限界ギリギリのラインとなりました。このエリアをはみ出すと点字ブロックにかかったり、通行の妨げになる可能性がいっきに高くなります」

柏では「道路占用」という観点から、音のみに限らずアンプやドラムセットを置くことを禁止としている。

仮にアンプを使わないからといって、コーラスの人たちが10人並んで歌ってもやはり通行を阻害することになり、当然2×3メートルを逸脱するので、このようなパフォーマンスも断っている。

「これまで寄せられる苦情を見ていくと、音ももちろんありますが、多いのは『アンプやマイクスタンドなどで道路を占用していることはおかしい』ということがあります。ですから、あくまでも柏では一時的な道路利用であり、占用とは言えない範囲で許可するという考え方です」

なお参考までに国土交通省では「道路に一定の工作物、物件又は施設を設け、道路の空間を独占的・継続的に使用すること」を「占用」と定義付けている。

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