アメリカ建国の父の逸話に仕事人の本質が映る訳 古典「フランクリン自伝」を読んで学べること
教養ほど実践的で実用的なものはない。
教養というと仕事の具体的な局面では役立たないフワフワしたものであるかのように思っている人が多い。
大間違いだ。スキルやノウハウといった個別具体的な知識は確かに有用だが、教養にははるかに汎用性がある。どんな状況で、何に直面しても、教養を持つ人であれば、自分の内在的な価値基準に則して決断できる。大局観と言ってもよい。
教養を獲得するための王道は何と言っても読書だ。ただし、「実用的なビジネス書」のほとんどは大局観の形成に役立たない。有用な情報や知識を得ることはできても、読み手の価値基準にまでは影響を及ぼさない。
読むべきは古典だ。長い歴史の中で多くの人に読み継がれてきた超一流の書物だけが古典として残る。古典は間違いなく教養の錬成にとって有用だ。
アメリカ合衆国建国の父として讃えられるベンジャミン・フランクリン(1706-1790)。彼が遺した自伝は、古典中の古典だ。アメリカはもとより、世界中で読み継がれてきた。
私見では、フランクリンのリーダーとしての特質は次の3点に集約される。
第1に、ジェネラリストであること。リーダーに「担当」はない。定義からしてリーダーは担当者とは異なる。特定の専門分野に閉じこもらず、成すべき目的を実現するためには何でもやる。自分の前の仕事丸ごとを相手にする。今日では「ジェネラリスト」というと専門能力がない凡庸な役職者のように聞こえるが、それは誤解だ。そもそも「ジェネラル」とは総覧者を意味する。ようするに「総大将」だ。フランクリンは言葉の正確な意味でのジェネラリストだった。
第2に、プラグマティスト(実利主義者)であること。耳触りがいいばかりでその実、空疎なかけ声に終始する似非リーダーが少なくない。目的の実現にコミットするのがリーダーの仕事だ。それには言うだけでなく実行しなければならない。しかも、一人でできることは限られている。自らの構想に多くの人を巻き込んで、目的の実現に向けて動かしていかなければならない。そのためには合理的でなければならない。
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