「自分本位な人」が結局大きな幸せをつかむ必然

「利他」「協調」の対極にあるわけではない

「セルフィッシュ」という言葉にはマイナスイメージがつきものだが、(左)楠木建氏と(右)秦卓民氏にこの言葉の本質を解説してもらった(撮影:尾形文繁)
日本人は依然、空気を読んでいる。周囲への気遣いに、どこか疲れていないだろうか? 「空気を読むな」と指摘されても、人間関係を忖度しないで過ごすことは、実際には難しくないだろうか。
また、利己的な人はメンバーに嫌われるが、非利己的な人もメンバーに嫌われる――この衝撃的な心理学の実験結果が記憶に残っている人も多いだろう。
利他と利己/自分中心と自己犠牲/勝手な人といい人――これは根深い問題だ。そこで、一橋ビジネススクール教授の楠木建氏と、スポーツ選手のマネジメントにも詳しい秦卓民氏が、世界的ロングセラー初の完全版邦訳『SELFISH(セルフィッシュ)』を例に考えてみた。

セルフィッシュな人は身近にいる

楠木建(以下、楠木):セルフィッシュ(SELFISH)という言葉だけを見ると、「自己中心」「自己正当化」「自己合理化」をイメージしがちですが、この本に書かれていることは似て非なるものですよね。

秦卓民(以下、秦):この本では、SELFISHを“自分本位”と表現します。そこが魅力なんですよね。

楠木:“自分本位”な人というのは、無理をせず、未来に期待せず、つねにゆとりがあるものです。この本は、「あ、これってあの人のことだ」って想像しながら読めます。実際、セルフィッシュな人として、秦さんも私も、共通の知り合いを思い浮かべましたよね(笑)。

:そうなんです。セルフィッシュを体現している人はすでにいて、その人とオーバーラップしながら読み進めると、リアリティーがあって実態がとてもつかみやすくなりますよね。

楠木:多くの自己啓発書は「それ全部できるやつ、ホントにいるの?」となりがちです。ところが、この本は、「この視点で見ると、自分が知っているAさんは、ここに書いてある人だよな」と、数は少ないかもしれないけれど、思いつくことができる。この本に書かれているような人は、ちょいちょいいるんですよね。

こういうところも、この本が時間を経ても価値が失せない理由でしょう。

:20年以上前の本なんですけどね。

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