「自分本位な人」が結局大きな幸せをつかむ必然 「利他」「協調」の対極にあるわけではない
楠木:そこに、リアルなヤクザを求めているわけではない。医者にしても警察にしても、リアルではなく「映画の中のリアル」を求めているわけです。
お客さんが求めているのは、映画に出てくる高倉健であって、ヤクザになった高倉健ではない。
お客さんのことを突き詰めて考えることは、自分本位を突き詰めて考えることにつながります。そういう意味で、セルフィッシュな人ほど利他的と言えるかもしれません。
「自分本位」で世の中を見る目を養う必要がある
秦:「SELFISH」を「自分本位」と訳したように、言葉の意味を本質から理解するということは、とくに曖昧な表現が多い日本語においては重要ですよね。今回の監修でも、訳語のニュアンスを吟味しました。
そういう言葉の意味という点で、普段から気になっていることがあります。例えば、「価値観」という言葉。あなたの大切にしている価値観は何ですか?と聞いたときに、出てくる答えの多くは、「良識」によったものなんです。良識は、どちらかというと社会的にコンセンサスのとれていることで、自身の「価値観」ではないことが多い。これはとても残念なことです。
そうやって「自分本位」で世の中を見る目を養わないと、どんどん「世の中的に正しいこと」のほうに自分の考えが支配されていきますよね。
楠木:私と山口周さんの著書『「仕事ができる」とはどういうことか?』でもさんざん言いましたが、「好き嫌い」という領域に「良しあし」を持ってくるからなんです。自己中心という考え方は、実はつねに他者と比べてどうか、という考え方をまとっています。他者よりも自分が優れていること、他者よりも自分が特別であることに気を払いますから、どこか競技的な側面もあります。
他者と比べた自分ではなく、自分が何をしたいか、自分自身の好き嫌いから生まれてくる「自分本位」こそが、大事なのだと思います。
(次回に続く)
(構成:高森勇旗)
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