「自分本位な人」が結局大きな幸せをつかむ必然 「利他」「協調」の対極にあるわけではない

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楠木:そこに、リアルなヤクザを求めているわけではない。医者にしても警察にしても、リアルではなく「映画の中のリアル」を求めているわけです。

お客さんが求めているのは、映画に出てくる高倉健であって、ヤクザになった高倉健ではない。

お客さんのことを突き詰めて考えることは、自分本位を突き詰めて考えることにつながります。そういう意味で、セルフィッシュな人ほど利他的と言えるかもしれません。

「自分本位」で世の中を見る目を養う必要がある

:「SELFISH」を「自分本位」と訳したように、言葉の意味を本質から理解するということは、とくに曖昧な表現が多い日本語においては重要ですよね。今回の監修でも、訳語のニュアンスを吟味しました。

『SELFISH(セルフィッシュ) 』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

そういう言葉の意味という点で、普段から気になっていることがあります。例えば、「価値観」という言葉。あなたの大切にしている価値観は何ですか?と聞いたときに、出てくる答えの多くは、「良識」によったものなんです。良識は、どちらかというと社会的にコンセンサスのとれていることで、自身の「価値観」ではないことが多い。これはとても残念なことです。

そうやって「自分本位」で世の中を見る目を養わないと、どんどん「世の中的に正しいこと」のほうに自分の考えが支配されていきますよね。

楠木:私と山口周さんの著書『「仕事ができる」とはどういうことか?』でもさんざん言いましたが、「好き嫌い」という領域に「良しあし」を持ってくるからなんです。自己中心という考え方は、実はつねに他者と比べてどうか、という考え方をまとっています。他者よりも自分が優れていること、他者よりも自分が特別であることに気を払いますから、どこか競技的な側面もあります。

他者と比べた自分ではなく、自分が何をしたいか、自分自身の好き嫌いから生まれてくる「自分本位」こそが、大事なのだと思います。

(次回に続く)

(構成:高森勇旗)

楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授

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くすのき けん / Ken Kusunoki

1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

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秦 卓民 ENERGIZE代表取締役

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はた たくみ / Takumi Hata

1979年東京生まれ。ENERGIZEは、スポーツ選手、企業経営者、経営幹部チームへのコーチング、新規事業開発コンサルティング、新卒採用コンサルティグなど、個人や企業のパフォーマンスアップをサポートできる数少ない総合コンサルティング会社で、顧客には、リンクアンドモチベーション、Plan・Do・See、サニーサイドアップなど多数。またセムコスタイル・インスティテュート・ジャパンは、セムコ社のCEOであるリカルド・セムラー自らが出資したコンサルティング会社「セムコスタイル・インスティテュート」とライセンス契約を結び、日本で独占的にセムコスタイルのコンサルタントをできる権利を有する。

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