「広く浅い」人間関係の方が人は幸せになれる 適度の刺激とストレスが幸福のカギ

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日本人は世界一、不安遺伝子を持つ人の割合が高いといわれているが…(写真:saki / PIXTA)
よく言うポジティブシンキングが、ネガティブ感情を排除するやや行きすぎの前向き思考なのに対し、ポジティブ心理学はポジティブな自分とネガティブな自分を両方認め、よりよく、幸せな状態を目指す学問だという。その神髄について、『実践 ポジティブ心理学』を書いた慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科前野隆司教授に詳しく聞いた。

病気になりにくい体を作ることの“心版”

――よく「幸せは気の持ちよう」といいますよね。

心理学や認知科学、脳科学が発達していなかった昔は、気の持ちようだと根性論で語るしかなかった。最近はもっと科学的に、いくつかの条件を整えれば「well-being」(心身ともに充実したよりよい状態)を目指せることがわかってきた。病気になりにくい体を作ることの“心版”なんです。

――人生が好転していく黄金比率はポジティブ感情とネガティブ感情が3対1、という説を紹介されています。ポジティブ100%というのもまたいけない?

ポジティブに振り切るとヒトラーの全体主義みたいになってしまう。心の中の批判的感情を抑えるとそれがストレスになる。

ネガティブは決して悪い面だけじゃないんです。実際社会の役にも立つ。日本人は世界一、不安遺伝子を持つといわれますが、「この点がまだダメだ」というネガティブ感情が緻密なものづくりやすし、工芸に見る研ぎ澄まされた美学を完成させたともいえる。嫌な上司がいたら愚痴も言いつつ、前向きに対応策を考えるとか、いい部分も探してみるとかしたほうが幸せ感は上がる。要はバランスです。

――本当に幸せな状態になるには、ある程度の負荷、よいストレスをかけることが必要なのだとか。

ストレスがないと成長がない。変化していく爽快感や、刺激を受け成長することは幸せ因子のひとつ。悪いストレスに至らない範囲でよいストレスをかけるのが大事です。

よく幸せというと、お花畑の中で心安らかに座ってる場面を想像したりしますが、調べてみるとそうじゃないんですよ。初めて見る花を発見して喜ぶとか、何かウキウキと新しい刺激のあるほうが人間幸せに感じるよう脳ができているんです。ただ変化にはストレスが付きもの。好きな花の写真を撮るにも、どのアングルで撮ろうとか、風で揺れてなかなか決まらないとか、気にならない程度の小さな小さなストレスがある。そういうのをいいストレスと呼びます。

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