日本人は、根本的に戦争には向いていない 作家・西村京太郎が経験した戦争と戦後

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まもなく戦争のことを誰も彼もが知らなくなってしまう…(撮影:尾形文繁)
戦中派の人気トラベルミステリー作家、西村京太郎氏。新著『十五歳の戦争 陸軍幼年学校「最後の生徒」』は、貴重な証言でもある。

みんなが知らないなら僕が書いておこう

――今なぜ、ほぼ米寿のミステリー作家が「自伝的フィクション」を執筆したのですか。

戦争について書きたくなった。

戦争については、経験して、自身としては飽き飽きだったが、若い編集者が日本人なら誰でも知っていると思っていたB29からして知らない。大型模型を前にして、これは何かと問われて愕然とした。そういう時代になってしまったのかと。これでは、まもなく戦争のことを誰も彼もが知らなくなってしまう。みんなが知らないなら僕が書いておこうと。

――本書にあるように「日本人は戦争に向いていない」のですね。

「トップ作戦」というのがあった。死を覚悟した体当たり攻撃のことだ。なぜ日本だけがそうしたのか。ドイツでさえしていない。戦争は死んだら負けだ。どれだけ生き残っているかが問題なのだ。それが日本は玉砕だ、総員突撃だと、どれだけの将兵が死んだかが戦歴の尺度になってしまう。それも命令だから仕方がないと。本来は自分で考えてやることが苦手で向かないのだから、戦争はできない。

――精神論が跋扈(ばっこ)しました。

大楠公(だいなんこう)(楠木正成)精神なのか。ゲリラ戦の巧者で相手を惑わすが、誰も彼をも死のほうへ導く。戦中、兵士の心得を記した戦陣訓によって「生きて虜囚の辱めを受けず」と捕虜になることを固く禁じたから、これでは自決しかない。「敵の飛行機は精神で落とせ」と指導者が演説し、もう不合理を絵に描いたような状況に追い込む。

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