右でも左でもない「リアリスト」が問う国防論 はたして国のために死ねるか?

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「国のために死ぬ」ことの意味とは?(写真:photo-uny / PIXTA)

2001年に海上自衛隊に特別警備隊という部隊が創設されるまで、自衛隊に特殊部隊は存在しなかった。特別警備隊はある事件を端緒にして誕生することになる。その事件とは1999年に起きた、能登半島沖不審船事件である。

自衛隊史上初の海上警備行動が発令

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この事件は覚えている人も多いだろう。イージス艦「みょうこう」が北朝鮮のものと思われる工作船を追跡し自衛隊史上初の海上警備行動が発令された事件である。このとき「みょうこう」の航海長を務めていたのが本書『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』の著者である伊藤祐靖だ。彼はこの事件を機に特殊部隊の創設にまい進し、先任小隊長を務める事になる。

本書冒頭の不審船事件の記述から緊張感が溢れだす。今まさに日本人を拉致しているかもしれない北朝鮮の工作船に伊藤は激しい怒りを覚えながら追尾任務をこなす。海上保安庁の船が燃料切れの心配をし途中で帰投してしまったために、追跡の任務は「みょうこう」に一任されていた。この時、それまで一度たりとも発令されたことのない、海上警備行動が発令されていた。日本という国家が初めて安全保障上の問題を自分たちの力で解決しようとした瞬間だ。

「みょうこう」は威嚇射撃のために127ミリ砲を何度も工作船の50メートル付近に着弾させる。127ミリ砲弾の威力は凄まじい。砲弾が50メートルの近さで炸裂しているのに工作船は着弾でできた水柱をかわしながら操船するという冷静さを見せていた。伊藤は敵ながら感嘆の念すら覚えたという。また自分と同じ種類の人間だとも感じた。

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