徳川家康「泣き顔」晒して天下取りに至った理由 トップが気弱で臆病であることのメリットは?

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徳川家康演じる松本潤さん。多彩な表情で家康の内面を表現しています(画像:NHK大河ドラマ『どうする家康』公式サイト)

大河ドラマ『どうする家康』を観ていると、登場人物らの特徴が、その表情や所作に醸し出されていることに気づかされます。菩薩のような優しいまなざしで気品あふれる今川義元(野村萬斎)、鋭い眼光から絶対的自信を放つ織田信長(岡田准一)、不敵な笑みに狡猾さがにじみ出る武田信玄(阿部寛)。

家康の側近に目を移すと、悪戯っ子のような表情で殿の繊細な心を癒す瀬名(有村架純)、眉間のしわと一文字に結んだ唇で殿を厳しく教育する石川数正(松重豊)、目じりのしわを絶やさず優しく殿を諭す酒井忠次(大森南朋)、人と目を合わさず心の内を見せない服部半蔵(山田孝之)などなど、多彩な表情が登場人物の特性を浮かび上がらせています。

肝心かなめの徳川家康(松本潤)は、どんな表情をしているでしょうか。本日は、表情分析の専門知見から、家康の表情に表れるその特徴と内面を深読みしてみたいと思います。

強気に決断できない「気弱で臆病」な戦国武将?

ドラマ前半の家康を簡潔に表現すると、「気弱で臆病」につきると思います。家康は、決断が必要な面々で、苦悩・号泣し、恐怖、懸念、心配、不安を顔いっぱいに表します。

例えば、ドラマ第1回。家康(このときの家康の名は、元康)率いる三河勢が、敵の織田軍に包囲され陥落寸前の大高城に兵糧入れを遂げ、今川軍の助けを待つ。しかし、家康は、今川軍が桶狭間にて織田に敗れ、大高城へ来ないことを知る。三河勢は敵の真っただ中に取り残されてしまい、籠城すべきか、引き上げるべきか決断を迫られる場面。織田軍がどんどんと城に迫り来る中、家臣たちから指図を求められる家康。身体をわなわなと震わせ、眉間と鼻の周りにしわを寄せ、目をぎゅっと閉じ、歯を食いしばる。そんな苦悩と苦痛で心身を縮こまらせ、家康は、「どうしたらええんじゃ~」と絶叫。

続いて、第3回。永禄三(1560)年7月下旬。水野信元(信元は、家康の出自である松平家を裏切り織田勢に転じた)が城主をつとめる刈谷城攻めで苦戦を強いられる中、今川義元亡き後、今川軍を率いる氏真に援軍を求めるものの、一向に来ず。戦死者が増え、負け戦。次なる手立てもない。そんな折、家康の元へ、「今川を切り、信長様と手を組め。俺が上手く口を利いてやる」と信元からの提言。しかし、今川氏真の元には、出陣前に残してきた妻の瀬名と子どもがいる。今川を切り、信長勢に付くことが民のためになるという忠臣二人からの献言。それに対し、「嫌じゃ、嫌じゃ……わしは駿府に、妻と子の元に帰るんじゃー!」と大号泣で返す家康。

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