過食、喫煙の悪習慣をやめたい人に伝えたい真実 自己啓発のアドバイスに従ってもまず解決しない

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悪い習慣を断ち切るには時間がかかる(写真:flotsam/PIXTA)
有名人の成功体験や幸福の秘訣。幸せな人生を約束する斬新な哲学。望むものが手に入ると謳う引き寄せの法則――。
この種の自己啓発に「根拠がない」と断じるのは、神経科学の学位をもち、科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』で長年コンサルタントを務めてきたジャーナリストのヘレン・トムソン氏。彼女が科学的エビデンスを調べ尽くしてたどり着いた、賢く、幸せに、ストレスの少ない人生を送るための包括的なガイドである著書『人生修復大全』の第8章「習慣をつくり、悪習を断ち切るためには」から一部抜粋、再構成して3回に分けてお届けします。

習慣が悪いものになると中毒と呼ばれる

私は爪を噛む。世界でいちばんの悪癖ではないが、一度でいいから、短くなったギザギザの爪先を残念に思うことなく、マニキュアを塗ってみたい。この癖がはじまったのは、おそらく小学生の終わりごろ。それまでは親指を吸うのに忙しくて、手のほかの部分にはあまり関心がなかったのだと思う。

習慣の問題は、いいものであれ悪いものであれ、しばしば無意識のまま行われているという点だ。出勤する、携帯電話をチェックする、朝食を摂る。こうした日常的な行動の多くは――実際には約40%が――習慣化されている。自分たちの生活に明らかにいい影響、または悪い影響を与えているとわかったときにはじめて、私たちは習慣を意識しはじめる。自分ではどうすることもできなくなり、有害なものになってしまうと、習慣は中毒と呼ばれるようになる。

自己啓発の世界では、習慣(とくに喫煙、過食、運動)をコントロールする手助けをしてくれる、ブログや書籍や講座が大いににぎわいを見せている。しかし、何度も言われてきたアドバイスの多くは、時代遅れの証拠や事例証拠[訳注:逸話や風聞などの形態をとる形式的でない証拠]に基づいている。

昔からよく試されている禁煙法ひとつとっても、最近のきちんと管理された実験では、結果はまちまちだ。また、真実として再三吹聴されてきた「事実」もある。新しい習慣を身につけたり、古い習慣を捨てたりするには21日かかる、というのもそのひとつだ。この説に関するエビデンスは不明だし、きちんと調べれば、これがまったくのナンセンスであることは明白だ。

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