過食、喫煙の悪習慣をやめたい人に伝えたい真実 自己啓発のアドバイスに従ってもまず解決しない

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脳内ではこうした関連づけが常に行われており、これが学習や記憶の基礎となっている。タバコを吸いながらビールを飲むと、タバコから得られる報酬に関連するニューロンと、ビールという概念、味、匂いに関連するニューロンが同時に脳内で電気パルスを発火させる。昔から「同時に発火したニューロンは、互いにつながる」と言われているが、ふた組のニューロンがこのようにしてつながると、一方の活性化が他方の発火を促すようになる。このため、パブを見かけたり、ビールを飲んだりすると、もれなくタバコのことを考えてしまうのだ。

つまり、習慣を断ち切ろうと思ったら、その習慣に関連するきっかけも考慮したほうがいい。多くの研究がこれを裏づけており、欲求の引き金となりそうな状況や環境をきちんと理解している人ほど、成功する確率は高くなる。

自分に優しくする

習慣と環境のつながりについては、つぎのことも考慮する必要がある――習慣を壊すにしてもつくるにしても、タイミングの良し悪しがあるので、実行するときは時期をよく考えること。人は、新しい仕事に就いたり、大学を変えたりして周囲の環境が乱れると、習慣を変えやすくなるという。それまでの環境は、おそらく昔の習慣と固く結びついている。だから物事が変わると、それまで神経回路に築かれてきた習慣と環境の関連性が弱くなるのだ。

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たとえばそれを、森を抜けて家までつづく、草の生い茂った道だと思ってほしい。その道を使うほど道はきれいになり、歩きやすくなるので毎日使うようになる。しかし、もし、急に新しい道ができたら、昔の道を使う頻度は下がり、草が生い茂り、今後その道を使う可能性はますます低くなっていく。

脳内でも同じようなことが起きる。関連したふたつの事柄を同時に引き起こさないようにすれば、ふたつを結ぶ神経回路は弱まり、いずれ破壊されるだろう。日常のちょっとした変化でもいい。環境に対する小さな変化が、脳に大きな変化をもたらすのだ。

習慣をつくる/壊す際のここでの最後のアドバイスは、自分に優しくすることだ。失敗をすることもあるだろう。大切なのは、自分を責めないことだ。多少の後退は問題ではない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究で、新しい習慣を身につけたい約100人を追跡調査したところ、昔のやり方に戻っても、長期的な影響は見られなかった。何をするにしても、自分を追い込んではいけない。新しい習慣を実践したり、古い習慣を避けたりするたびに、各基盤となる経路は強化・弱化され、新しい自分への前向きな一歩となっている。

時間はかかるかもしれないし、その時間は人によって大きく異なる。21日というのは明らかに楽観的だ。実際、新しい習慣を定着させるのに必要な期間には、大きなばらつきがあり ――実験では平均66日だったが、ある研究では、18日から254日まで幅があったという。だから、あきらめないでほしい。いずれ習慣を変えられるはずだ。意志力の助けを借りれば、きっと。

ヘレン・トムソン フリーランスライター

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へれん・とむそん / Helen Thomson

『ニュー・サイエンティスト』のコンサルタント。『ガーディアン』『ニューヨーク・タイムズ』『ネイチャー』「BBC」などにも寄稿、ジャーナリストとしてさまざまな賞を受賞している。著書『9つの脳の不思議な物語』(文藝春秋)で、2018年に『タイムズ』のブック・オブ・ザ・イヤーを受賞。神経科学の学士号、サイエンスコミュニケーションの修士号をもつ。ロンドン在住。

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