アメリカ国立精神保健研究所の研究テーマの中でも重要視されているし、アメリカ国立がん研究所など、心の研究は対象外であると考えられることの多いいくつもの研究機関でも注目されている。
心理学や医学とはあまり関係のない機関、たとえばコンピュータ科学の研究所やマーケティング組織、あるいはハーヴァード大学ケネディ政治学大学院などのビジネススクールも、この新たな科学に研究リソースや人材を割いている。
情動がなければ決断も思考もできない
我々の日常生活や経験において感情の果たす役割についても、感情神経科学は重要なことを教えてくれる。
ある一流科学者は、「情動に関する従来の『知識』がもっとも根本的なレベルで疑問視されはじめている」と言っている。
この分野を代表するもう一人の研究者は、「ほとんどの人は、自分には情動があるのだから、情動が何であってどうやって働くのかはよく分かっていると思い込んでいる。……だがそれはほぼ例外なく間違っている」と言っている。
さらに3人目は次のように言う。「いまは情動、心、脳の理解をめぐる革命のさなかにある。その革命によって、精神疾患や身体的疾患の治療法、人間関係の理解、育児法、そして突き詰めると人間観など、この社会の中核をなす教義を考えなおさざるをえなくなっている」。
もっとも重要なこととして、かつては情動は効果的な思考や決断を脅かすものと信じられていたが、いまでは、情動の影響を受けないと決断をすることも、さらには思考することもできないと分かっている。
人類が進化してきた環境と大きく異なる現代社会では、情動は望ましくない効果をもたらすこともあるが、それよりも正しい方向へ導いてくれる場合のほうがはるかに多い。それどころか、もしも情動がなかったらどの方向にも容易には進めないだろう。
(翻訳:水谷淳)
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