かつて、感情は理性による論理的な思考を妨げるものであり、避けたり抑えたりすべきものとされていた。しかし、「感情神経科学」という注目を集める研究によって、感情や情動は人間の意思決定などに大きな役割を果たしていることが明らかになっている。感情や情動は直感的で正しい判断を下すために必要不可欠であり、それをコントロールすることは、社会的成功にとっても欠かせないものなのだ。今回、日本語版が6月に刊行されたレナード・ムロディナウ氏の著書『「感情」は最強の武器である』より、一部抜粋、編集の上、お届けする。
コア・アフェクトというセンサーシステム
コア・アフェクトとは自分の身体の調子を反映したもので、身体の各器官系に関するデータや、外界の出来事に関する情報、そして世界の状態に関する自分の考えに基づいて何となく感じる気分、それを指し示す一種の温度計といえる。
情動と同じくコア・アフェクトも精神状態の1つである。情動よりも原始的であり、進化のタイムライン上で情動よりもずっと前に出現した。
それでもコア・アフェクトは湧き上がる情動的経験に影響を与え、情動と身体状態を結びつける。
コア・アフェクトと情動の関係はまだ十分に解明されていないが、情動を生み出す最も重要な要素や材料の1つであると考えられている。
情動はアンダーソンとアドルフスが示した5つの主要な特性を持っていて、悲しみや喜び、怒りや恐れ、嫌悪や自尊心などいくつもの具体的な形を取るが、コア・アフェクトには2つの面しかない。
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