情動が生じる際には、コア・アフェクトによって与えられた自分の身体からの入力が、自分の置かれた状況、その状況の背景、および予備知識と組み合わさることで、自分の経験する情動が生み出されると考えられている。
コア・アフェクトは一種のベースライン状態と考えることができ、それが特定の状況における情動や、その結果として下される直観的判断に影響を与える。
そのためこのコア・アフェクトは、身体と心をつなぐ重要なものであって、身体的状態と、思考や気分、そして決断とを結びつけている。
宝くじで1万ドル当たったら、きっと一日じゅう幸せな気分で、その気分が何日も続くだろう。
そのときコア・アフェクトは、ポジティブな誘意性と活発な覚醒性へと急激に変化するだろう。大金が転がり込むのは生きていくうえで一般的にいい話なのだから。
しかしコア・アフェクトは、経済的幸福よりも身体的健康のほうと強く結びついている。
そのため、せっかくこの良い知らせを受けても、昼食を食べ損ねて腹が減ったらネガティブになるだろうし、疲れてきたら覚醒性が下がるだろうし、ドアの枠に頭をぶつけたら瞬時に急低下して何分間か元に戻らないだろう。
生命はエントロピーに抗う
コア・アフェクトの働きと、心身相関におけるその重要性を理解するには、ノーベル賞受賞者で物理学者のエルヴィン・シュレディンガーが1940年代に著した著作に立ち返るのがいいだろう。
その中でシュレディンガーは生命を、エントロピー増大の法則に立ち向かう戦いと定義した。
エントロピー増大の法則によると、物理系は本来、時間とともにどんどん無秩序になっていく傾向を持っている。
たとえばコップの水にインクを1滴垂らすと、きれいなしずくの形はそう長くは持たず、やがてぼんやりした形になってコップ全体に広がってしまう。自然界に存在するきわめて秩序立った物体のほとんどは、最終的にそのような運命をたどる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら