多細胞生物が進化すると、1個1個の細胞がそのプロセスを維持するとともに、コア・アフェクトのようなもっと高いレベルのメカニズムが進化した。
高等動物の場合、ホメオスタシスを乱すものを監視する番人としての神経状態がコア・アフェクトであって、身体はその影響を受けて適切に反応する。
先ほど述べたとおり、コア・アフェクトは誘意性と覚醒性という2つの次元しか持っておらず、かつて情動として考えられていた繊細な状態とは異なる。
さらに、恐れなどの情動的経験は多数の脳領域にまたがったネットワークから生じるようだが、コア・アフェクトは2つの特定の領域における活動と相関している。
心地よいか不快か、ポジティブかネガティブか、いいか悪いか(あるいはその中間のどこか)を表す誘意性は、「すべて問題なさそうだ」とか「何かが変だ」といったメッセージに相当する。それを生み出すのは、前頭前皮質の中でも眼窩のすぐ上に位置する眼窩前頭皮質である。
この脳領域は意思決定・衝動制御・行動的反応の抑制と関連していて、このいずれの機能も、人間の行動にとって重要な役割を果たす。
コア・アフェクトの持つ覚醒性の次元は、感覚刺激に対する敏感さの状態、神経心理学的な警戒度に相当する。つまり、その敏感さの強度、すなわち強いか弱いか、活力があるか無気力であるかの尺度である。
覚醒性は扁桃核というアーモンド形の小さな構造体の活性と相関しており、この扁桃核はさまざまな情動の生成に役割を果たしていることが知られている。
コア・アフェクトの強力な影響
コア・アフェクトが眼窩前頭皮質や扁桃核の活性と相関しているのは偶然ではない。
これらの構造体は意思決定において重要な役割を果たしていて、感覚野および、情動や記憶に関わる複数の脳領域と大規模に連結していることが知られている。そして身体や周囲の状態に関する情報がたえず流れ込んでいる。
その情報を統合したコア・アフェクトは、身体のホメオスタシスや現在の外界環境の状態が生存にふさわしいかどうかを反映していて、我々のあらゆる経験やあらゆる行動に適切な形で知らず知らずのうちに影響を与えているのだ。
(翻訳:水谷淳)
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