転職で壁にぶつかった「34歳・元期待の若手」の顛末 何もかも違う異業界で苦闘、再確認した大切な物

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大学時代に東日本大震災を経験し、地域の中でいろいろな人たちが支え合いながら教育環境を作っていく尊さと大事さをとても感じたまま民間企業に就職をしたので、『こんなチャンスは人生のなかでなかなか来ることはない!』って思ったんです」

すぐに答えを出すことはできなかった。2014年の1月に誘われ、半年かけて悩んで、2014年8月18日に上司に話をした。大阪時代のことだった。

「梅田の飲み屋さんに上司と行きました。『話があります、飲みに行きましょう』って。何も知らなかった自分の面倒を見てくれて、仕事のいろはを教えてくれた方です。辞めますって伝えたら『やだ! 無理!』と言われてしまって(笑)。朝5時くらいまでずーっとお互いの気持ちを語り合いました。そうしたら上司が泣いてくれて。『お前のことはしっかり育てたかったけど、お前の決断を尊重するよ』と。

その後、役員などと面談を重ねていきました。全部で5回くらいでしょうか。自分のような若手にもしっかり向き合ってもらい、一回一回が商談のような緊張感のある会話でした。若造だったので、『辞めないほうがいいのかな』と転職を踏みとどまりそうになりました。そしたら今度は退職の意向を相談した上司から『いやいや、一回決めたんだから。筋を通しなさい』と叱られまして……」

きっちり筋を通して退職、新天地では苦労の連続

最終的には背中を押される形で、2015年1月末に退社。誘われたのはちょうど1年前だが「年間売り上げを作って辞めます」と上司とも約束し、それを果たして退社したためだった。

こうして、島根県の雲南市に移住した鈴木さん。カタリバが主導している雲南市教育魅力化プロジェクトの立ち上げメンバーとして島根でのキャリアをスタートしたが、自身の想像とは裏腹に、苦労の連続だったそうだ。

「雲南市の教育委員会の方と一緒に市のキャリア教育に対するビジョンを作ったり、地域のさまざまな人たちに関わってもらいながら進める『探究学習のプログラムカリキュラム』を作成し、学校側が自走できるように仕組み化する事業をしていました。

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