「奨学金380万」45歳彼女が語るロスジェネの苦悩 田舎の男尊女卑と、不景気に苦しめられてきた

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20代の筆者は初めて聞いた制度だったので調べてみたところ、「高校進学希望者の増加に伴い、特定校へ志望者が集中するとともに、高校間格差が助長されるような状況に対する改善策として、一部の都県で導入された」という。

くじ引きのような受験制度と、私立の滑り止めを受けられない実家の経済状況。普通なら不安に押しつぶされそうになるところだが、植田さんは賢明かつ前向きだった。「学校群制度の対象の普通科はやめて、専門学科に行こう」と考えたのだ。その結果、とある農業高校にたどり着いた。

「母からも『大学に行くなら県内・国立・4大』と言われていたので、必然的に進学先は県内の国立大学しかありませんでした。そんな中、わたしが見つけてきた農業高校は、その国立大学への『推薦枠』があったので、『ここだ!』と思いました。仮に推薦を受けられなくても、センター入試を受けることもできるので、チャンスが2度あったんですね」

こうして大学進学を見据えて、県立の農業高校に進学した植田さんだったが、この進路にはもう1つのポイントがあった。農業高校といっても、彼女が選んだのは「情報処理系」の学科だったのだ。実際、授業では当時最先端だったFUJITSUのCOBOLなどを使ってプログラムを組んでいたという。

「とはいえ、毎年確実に大学への推薦があるわけではなく、0人の年もありました。また、そもそも『農業高校の推薦枠』も全国の農業高校が対象だったので、当時の自分としては、それなりの賭けでした」

しかし、その賭けに無事に勝ち、推薦枠をもぎ取り、植田さんは県内の国立大学に合格することができた。

学費は奨学金で賄うことになったけれど…

こうして、大学に入学した植田さん。実家にお金はないので、学費は奨学金で賄うことになった。

「それでも両親は銀行に入学金を借りに行ってくれました。でも、それだけでは足りないので、大学生の間は奨学金第一種(無利子)を借りました」

さらに、市から返済不要の奨学金も支給されていた植田さんは、勉強に励むだけではなく、大学から馬術部にも入部。実家から1時間半かけて通学していたが、馬術部では朝早くに登校して馬の世話をした部員が優先的に乗馬できたため、大学の近くへと引っ越した。

が、ここでも男尊女卑な価値観に苦しめられることになった。

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