「奨学金380万」45歳彼女が語るロスジェネの苦悩 田舎の男尊女卑と、不景気に苦しめられてきた

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そして、大学院修了後は宣言通り社会人になった。入社したのは、当時、勃興したての県内のシステムエンジニアの会社。ところが、ブラック企業だった。就職できるだけ幸せだったとはいえ、つくづく厳しい時代だった。

月140時間のサービス残業

「システムエンジニアとは名ばかりで、今でいう『IT土方』です。でも、当時は就職口が本当にないのに、SEの求人ばかりはあったので、そこでかなり大変な仕事をしてきました。

給料は確かにいいのですが、月160時間の残業なのに20時間分しか残業代はつかず、家にも帰れないので、椅子を並べてオフィスで寝ていましたね。命を削って給料をもらっている感じでしたね。

でも、それが大変な道ということがわからないぐらい、ほかの仕事を知らなかったということです。社会人になって半年後には、毎月2万円の奨学金の返済も始まりましたが、お金を使う暇がないため、返済も苦になりませんでした」

ロスジェネ世代ど真ん中のエピソードが続くが、ここから少しずつ人生は好転していく。きっかけは仕事で……はなく、趣味で描いていたモダンアートだった。

「とある現代美術作家から『弟子にならないか?』とお声がけしてもらい、一緒に全国の美術館で展示をさせてもらうことになったんです。そこから、海外でも展示をするという話になって、中国に行く機会にも恵まれたのですが、英語がまったく話せなかった結果、他の国の美術館からの出展依頼をスルーしてしまったんです。

大好きな絵の可能性を、大嫌いな語学で潰してしまった……。そこから英語を勉強しようという気持ちが芽生えたのですが、日本で英会話教室に通ってもたぶん覚えないだろうと思ったので、会社を辞めてワーキングホリデーでカナダに行くことにしました」

しかも、ワーホリを名目に奨学金の返済の一時停止を申請したところ、承認されたため、海外で月々の返済に頭を抱える必要はなくなった。

「本当に助かりましたね。就職先があるかどうかもわからず、初めての海外生活でいっぱいいっぱいになって、奨学金の返済分まで稼ぐ余裕なんて考えていませんでした」

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