「奨学金380万」45歳彼女が語るロスジェネの苦悩 田舎の男尊女卑と、不景気に苦しめられてきた

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こうして、30歳で異国の地で生活することになった植田さん。プログラミングスキルがあったことが幸いし、すぐに地元の製造業のプログラマーになった。1年が経つ頃には「就労ビザを出すから」と残留を頼まれたが、当時付き合っていた、後に夫となる彼氏が、日本で待っていたので帰国。

その後、結婚して一度は専業主婦になったが、思うところがあり、とある総合商社に中途入社した。

「半年間は専業主婦を満喫していたのですが、ある晴れた日に洗濯を干しているときに『ずっとこれしてるの?』と思ってしまったんです。そこから、これまでのSEとしてのキャリアと、ワーキングホリデーで培った英語力が評価され、現在も勤めている会社に入社します」

高校時代から培ったITスキルと、大人になってから身につけた語学力が、意外な形でのキャリアにつながったのだった。

45歳となった今、植田さんは十数人の部下を持つ部門長となった。そして、奨学金は38歳のときに一括返済することができた。

「『負の物』を早くなくしたかったんです。返済し終わったときは『やっと終わった!』という開放感から『とりあえず、貯金しよう』という気持ちになり、同じ額を貯めるようになりました。夫婦間でお互いの稼ぎや貯金に干渉しないので、夫はわたしが奨学金を返していたことも知らないかも。

とはいえ、奨学金がなかったら、わたしは大学にも大学院にも行けなかったでしょう。そして、奨学金という『マイナスからのスタート』があったため、借りていない人たちに追いつくために、何をするべきなのかということをいろいろと考えてきました。だって、その人たちと同じスピードで努力していたら、いつまで経っても追いつけないですから」

娘には実力で希望する大学へ進んでほしい

そんな植田さんには2人の娘がおり、ともにフィギュアスケートを習わせている。なんだか、相当お金がかかりそうな気もするが……?

「やっぱり、裕福なご家庭の人が多いですね。でも、うちは娘たちに『サポートの限界はここまで!』という意味を兼ねて、何にいくらお金がかかったのかを伝えています。だから、お金の大切さというのは、同じ年齢の子たちよりも理解していると思っています。

だからといって、娘たちにはスポーツ推薦ではなく、きちんと勉強したうえで、自分の実力で入れる大学に進んでもらいたいです。フィギュアスケートの世界にはオリンピックの特別強化選手でありながらも、国立大学に合格した人もたくさんいるので、彼らを見習ってほしいですね」

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