日本名物「お尻を洗うトイレ」海外で普及しない訳 イノベーションはブルーオーシャンを泳げるか

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そうしますと、日本の市場では、新しい市場と需要を開拓し、日本の観光名物とも言うべき存在感を誇るウォシュレットなのですが、どうも海外では、イマイチなのです。

機能、価値、そして意味を提供する

この理由には、欧米と日本とのトイレ文化の違い、トイレの機能に対する消費者の認識の違い、住宅建設の請負業者が通常のトイレの代わりにウォシュレットを設置することに一般的に無関心、そしてトイレが通常設置されている場所の周辺に電気回路が備わっていないという技術的な不便性等々があげられます。

言い換えると、日本では「未来のシナリオ」を実現する過程において、前述のドラッカーの3つの要因「これまでの不調和を解決する」「従来の慣習を変えるための、新しいやり方を提案する」、そして「従来の認識を変える」がうまく機能しました。

つまり、日本では「購買決定の瞬間(buying moments)」を導くための新しい「意味」を提供することができたのです。ところが、欧米ではそれが購買決定の原動力となっていないのです。

つまり、新しい機能とそれに基づいて新しい価値をせっかくつくり上げたのだけれど、市場の歴史的、社会的、文化的、経済的、あるいは規制等の諸条件によって、それが存分に活かされていない場合があることにも留意すべきなのです。

アメリカの一般的な消費者にとっては、たくさん新しい機能があって素晴らしいし、アメリカの伝統的なトイレと比べると機能は優れているし、価値はあるね。でも、いったいどういう「意味」があるのだろう、となっているようです。

山脇 秀樹 ピーター・F・ドラッカー経営大学院教授

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やまわき ひでき

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学修士課程修了。1982年にハーバード大学経済学博士号取得(Ph.D.)。1982年より旧西ドイツ国立ベルリン社会科学研究所上級研究員、1990年よりベルギーのルヴァーン大学経済学部教授。1995年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン・マネジメントスクール客員教授を併任し、2000年よりカリフォルニア州クレアモントにあるピーター・F・ドラッカー経営大学院教授。2006年度より同校副学長、2009~2012年度に学長を務める。欧米のビジネススクールにおける初の日本人学長。

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