大学で工学や通信を学んだ後、ITの専門家として働き、その後は銀行やテクノロジー企業の経営にあたった。アルデバランを創業したのは、そうした経歴を経てしばらくした2005年だ。メゾニエは、幼い頃からエレクトロニクス技術に魅せられ、長い間ロボットが次世代のテクノロジーとして重要になるということを感じ取っていたという。
独自のエモーショナル・エンジン
彼にとってロボットとは、「人類のもうひとつの種で、人のために役立ってくれる」存在だ。アルデバランのロボットは「エモーショナルなインタラクションがすべて」と、メゾニエはあるところで語っている。機械ならば求められた機能を果たせばいいが、ロボットとは人の社会と心のためにある。そんなことを意味しているのだろう。
ナオを元に開発が行われたペッパーは、そのサイズや機能がもっと普通の人々とのやりとりに向くように考えられている。ナオのような2本足はなく、ペッパーは車輪のついた台車で動くが、それによってより重い電池を搭載することができ、持続時間が長くなる。走行速度も速いので、ユーザーの後をついていったり、家の中で動き回ったりする際の敏捷さでは優れている。
サイズの違いも、人間とのやりとりには大きな影響を及ぼす。ナオはよちよち歩きする赤ちゃんのようだが、一方のペッパーは小学生の子どもくらいの大きさなので、ユーザーとのインタラクションはもっと自然なものになることが期待されている。たかがロボットと思われるかもしれないが、ロボット開発者たちは人間がロボットと少しでも親しみが持てるよう、サイズや見かけでいろいろな知恵を絞っているのだ。
すでに世界中の開発者や研究所がナオに注目し、ナオはロボット開発のプラットフォームとして用いられている。彼ら開発者たちが、ナオの基本的な機能の上に独自の機能や性質を盛り込んでいく。ダンスをしたり、子供に指導をしたりするナオは、開発者たちがロボットに託した未来の姿だ。
また、アルデバランは、ペッパーを生み出す際に独自のエモーショナル・エンジンを開発した。これによって、同社のロボットは相手のエモーションを単に言葉だけで捉えようとするのではなく、顔の表情、声の調子、ジェスチャー、クスクス笑いなども考慮して、相手の状態を感知し、それに応じた対応をする。エモーショナル・エンジンはナオをはじめ、アルデバラン社のロボットに統合されているところだ。
メゾニエは、ロボットが世に出て来た今、「政治、人間、技術の面で根本的な変化が起こった」と語っている。これから日本に浸透するロボットの生みの親が、今後どんなことに取り組むのか。それが楽しみである。
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