シリコンバレーには、スタートアップが多い。そして、ここにはそうしたスタートアップを育成するアクセラレーターも多い。ポール・グラハムは、そうしたアクセラレーターの元祖とも言える「Yコンビネーター」を共同創設した人物だ。
起業家たちが受ける猛特訓
Yコンビネーターは、以下のようなしくみで運営されている。
スタートアップを目指す起業家は、毎年2回募集されるバッチと呼ばれるクラスへ応募する。このクラスは3カ月間続くもので、その間仕事場を提供してもらえるだけでなく、Yコンビネーターのアドバイザーや外部の起業経験者、ベンチャー・キャピタリストの指導を受けたり、彼らの講演を聞いたりできる。始まったばかりで、経験もない自分たちのビジネスをどう開発していけばいいか、そんなヒントがふんだんにもらえるのだ。
この3カ月は、超高速の学びと開発の時間である。この期間中、ただのアイデアだったビジネスは、具体的なサービスや製品として、場合によってはすでにユーザーが何千人、何万人といるような手応えのあるものにまで育っていなければならない。
3カ月が終了する直前にはデモ・デーが開催されて、自分たちのビジネス・モデルを披露。ここで投資界のインサイダーらが、めぼしい起業家と接触する。Yコンビネーターで鍛えられた有望な起業家らは、この時点から独り立ちして、世の中でスタートアップとしてやっていくというわけだ。
こういう、アイデアから製品やサービスのプロトタイプ(ひながた)を作り、投資資金を得るまでのもっとも困難な時期に、起業家らをサポートしようという考えは、グラハム特有のものだったと言える。
それまで起業家は孤軍奮闘して、知り合いからアドバイスを仰ぎ、親戚や友人から創業資金を得てスタートアップを始めていた。だが、今やYコンビネーターのようなアクセラレーターがあるおかげで、その部分が方法論化されて、サポートのシステムとして機能しているのだ。
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