9浪までの3年間は、仕事と並行して、休みになると小学校の基礎から固める勉強をし続けたたぶちさん。この地道な努力が、後に彼の成績を飛躍的に向上させることにつながります。
そして、もう1つの精神的支柱であったアイドルの応援活動も、彼に人生を変える大きなきっかけを与えました。
書店で働き始めて4年が経過した10浪目のある日、彼は『モーニング娘。』のコンサートを見に行き、SNSで仲良くなったファンの1人と初めて会いました。そこで、その相手の方に身体の障害があったことに、動揺してしまったのです。
「脳性麻痺の障害を持っておられる方でした。普通に話はできるのですが、彼が話すのが遅かったときに、緊張して、よく彼の話を遮って話してしまったんです。彼は何も悪くないのに、変に意識してしまう自分にとても自己嫌悪を抱きました。だから、自分のモヤモヤを晴らすためにもこうした障害のある方々のために何かできないかと考え、臨床心理の勉強をしたいと考えて大学にもう一度行きたいと思ったのです」
今まで漠然と持っていた「大学に行く」ことへの目的意識が変わった瞬間だったと言います。
基礎固めを徹底的にやる
たぶちさんは、かつて通った岡山進研学院に問い合わせ、翌年春から再び通うことを決断します。働いていた書店も辞め、融通のきく単発アルバイトをこなしながら1日最低6時間、中学校レベルの基礎固めを翌年の4月まで徹底的にやりました。
そして11浪目には、かつての彼とはまったく違う立派な受験生に変貌していました。
主体的に勉強をするようになった意識面の変化に加え、今までの受験で成績が上がらずに落ち続けた理由を分析できたことも大きかったそうです。
「今まで自己流で勉強していたんです。例えば、英語の先生に『音読をしなさい』と教わっても何もしませんでしたし、文法の問題集を放置して基礎もままならない状態で大学の過去問を解いていました」
かつて勉強をおろそかにしていた自分。しかし、30歳を間近にして再び予備校に通い出した彼にとって、勉強を教えてもらえる場は貴重でありがたいものだと、素直に思うことができたと言います。
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