会社や上司に不平不満を抱えていながら表には出さず、飲み屋で管を巻く会社員は少なくないだろう。しかし、「文句を言うぐらいなら実際にやってみたらいい」と考えるのが平田さんだ。
臥薪嘗胆の末、西日本営業部に異動した平田さんは「人前でしゃべるのが大好き」という自分の特技を活かしたオリジナルの旅行を企画しようと一念発起した。行き帰りのバスでも、宴会場でも、ツアー参加者に終始楽しんでもらえるお笑い旅行を発案したのだ。
「最初は『面白い旅行があるから来てください』と直接お客様を説得しました。するとそのお客様から『ホンマに面白いんか? 面白なかったらおカネ返してもらうで』と言われながら、それでもなんとか旅行に参加していただいていました」
8億円ブランドへの道
約束した以上、本当に面白くしなければならない。平田さんは一心不乱に旅行を盛り上げる努力をした。「行き帰りのバスではずーっとしゃべって、まるで『綾小路きみまろ』でした。宴会場では捨て身になって女装でパフォーマンスをして。お客様に大笑いしてもらうことができました」
すると参加者からある一言が返ってきた。「あんた、そこまでやるか?」。その成功体験が平田さんのオリジナル・ブランド「平田進也と行くツアー!」を生むきっかけになったのである。
ごく小規模に始まった平田さんのブランド。いかにして8億円ブランドへと歩みを進めていったのだろうか。平田さんは、「重要なのは、ギブ&ギブ、それも無欲のギブです。お客様を喜ばせたいと無心になったとき、利益利潤は降ってくるものです」と語る。
たとえば、観光ピークは夏場と言われている隠岐の島での冬旅だ。冬の日本海では身の引き締まったぷりっぷりのカニやアワビを食べることができることに目を付け、とっておきのご馳走を楽しんでいただける冬の隠岐レストランツアーを企画したのである。
旅先ではいつも、頭と体をフル稼働させる。隠岐に行けばカニの被り物をつけてカニ踊りをする。顔まで赤く塗るのも忘れない。『冬のソナタ』がはやればヨン様に扮し、『アナと雪の女王』が社会現象になればエルサの女装で踊る。
平田さんのツアーは決して安くないが、中身のサービスを考えると“お値打ち感”がある。ほかにはマネすることができない旅企画が評判を呼び、口コミが拡散。やがて平田さんが企画するツアーに顧客が殺到するようになっていったのだ。
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