太宰治と対極にいる文豪「三島由紀夫」
太宰治が『走れメロス』と相反するような人間性であったことを前記事では解説した。だがむしろ当時の文豪でもっとも『走れメロス』的な作家とは誰だったのだろう? そう考えてみると、1人の文豪の名前が思い浮かぶ。三島由紀夫。彼こそが、太宰治の対極にいる男といってよいのではないだろうか。
三島由紀夫は、太宰治のことを毛嫌いしていた。それは例えば平安時代に紫式部が清少納言の悪口を書いたように(『紫式部、現代のSNS的な痛烈「清少納言」批判の中身』参照)、ともに時代を代表する作家でありながら作風が異なる作家同士は嫌悪を示すことが多い。力のある作家同士が「あいつだけは無理だ!」と言うのは、才能があるからこそ、同じく才能のある(が、自分とはベクトルの異なる)相手の力量をよくわかるからなのかもしれない。
三島由紀夫は、太宰治のことを、エッセイの中で以下のように評する。
何とも三島らしい発言である。三島由紀夫の趣味は筋トレだった。一時期からボディビルにハマっていた彼は、自分を管理し、マッチョになることを目指していたのだ。つまり「冷水摩擦」や「器械体操」や「規則的な生活」というのは、三島自身が自らに課していた、健康的であるための習慣の1つだったのだろう。
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