7月1日に生まれた作家、獅子文六の名前をご存じだろうか。
戦前~戦後に活躍した人気作家である。慶応義塾の幼稚舎からそのまま慶応義塾大学に進学したが、中退。しかしその後、大正時代にフランスに留学し、フランス人の女性と結婚し、帰国。日本で子供も産まれ、演劇や小説執筆の活動に専念していく。……と、本当にびっくりするほど戦前の「文化系インテリ」を地でいくような存在だったのである。
当時の日本で、フランス現代演劇を学ぶことができる人なんて、なかなかいなかっただろう。というか、今ですらかなり珍しい作家だ。だとすれば、獅子文六が戦前戦後の日本に持ち込んだフランスの香りとは――どのようなものだったのだろうか?
今回は彼の作品に迫ってみたい。
女性の描き方が魅力的な、獅子文六の作品
獅子文六といえば、演劇や随筆も有名なのだが、なにより小説家として名を馳せた人物だ。新聞連載『悦ちゃん』が大ヒット。この『悦ちゃん』は、2017年にNHKで放送されたドラマ『土曜時代ドラマ 悦ちゃん 昭和駄目パパ恋物語』の原作にもなっている。ユースケ・サンタマリア演じる父親の再婚のために、10歳の娘・悦ちゃんが奔走する物語である。
しかし彼の作品の魅力は、単に昭和の流行を捉えたホームドラマにのみあるわけではない。実は獅子文六は、女性の描き方が、かなり魅力的なのである。
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