志賀直哉の批判に激怒、太宰治の反論に共感する訳 日本人の家族信仰になじめない人へのエール

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志賀直哉と太宰治
志賀直哉(左)と太宰治(右)(左写真:近現代PL/アフロ、右写真:topaz☆/PIXTA)
学校の授業では教えてもらえない名著の面白さに迫る連載『明日の仕事に役立つ 教養としての「名著」』(毎週木曜日配信)の第28回は、文豪・太宰治の文章から読み取れる強い信念について解説します。
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「斜陽」のころに大きな転換点を迎えた太宰治

川端康成への「俺の価値をあなたはわかっているんだろ!」という猛烈に思い込みの激しいラブレターを公開して始まった、太宰治の作家人生。彼は戦中も人気のある文豪ではあったが、ベストセラー作家となるのは戦後のことである。具体的に言うと、『斜陽』を発表し「斜陽族」という言葉が流行した時期、彼の作家人生は大きく転換点を迎える。

売れっ子になった若手作家(と言っても太宰ももう40代目前なのだが)を、文壇はどのように見つめていたのか。同人雑誌の『文学行動』(復刊第2号、1948年)において、志賀直哉は太宰のことをこう語っている。

「年の若い人には好いだろうが僕は嫌いだ。とぼけて居るね。あのポーズが好きになれない」

志賀直哉はどうやら太宰のことがかなり嫌いだったらしく、ほかにも彼の作品を強く批判している。

「二、三日前に太宰君の「犯人」とかいうのを読んだけれども、実につまらないと思ったね。始めからわかっているんだから、しまいを読まなくたって落ちはわかっているし」「何んだか大衆小説の蕪雑さが非常にあるな」(『社會』1948年4月号)

ちなみにこのとき、志賀と対談しているのは、なんとあのあこがれの川端康成。川端もまた「『斜陽』を読みましたけれど、別に新しいとか、これまでの人には書けない、というような感じはありませんね」と志賀に同調している。

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