安河内:じゃあコミュニケーションで苦労したのでは? 特に黒人の話す英語は、日本で習ってきたような発音や話し方ともかなり違うでしょうし。
Kaori:ヤバかったです(笑)。何言っているのかわかりませんでした。最初は全然友達もできなくて。声かけてくるのは、日本人女子が目当ての黒人男子ばかり。
安河内:モテたんだ。
Kaori:いや、モテたかどうかはわからないですが、声はよくかけられました。でも行ったとき私は大学の5年生でしたから、声かけてくるのは年下ばかり。やんちゃ坊主みたいな感じで、男性としてはまったく興味が持てませんでしたし(笑)。無反応を通していたので友達にもなれない。言葉が通じないと消極的になってしまうので、最初は暗かったですし、毎日が辛かったです。
“受験ブレーキ”で英語が口から出てこない!
Kaori:しかも、そんな英語がままならない状態だったのに、パフォーミングアーツのシアターのクラスをとってしまったんです。授業でいきなりインプロ(improvisation:即興)をやらされたりして。ほかの人がやるのを見ても、聞き取りができない。加えて文化的背景の違いもあって、何を言いたいのかがチンプンカンプン。自分の番では、頭で考えたことを「ちゃんと言わなきゃ!」というプレッシャーがブレーキになって、最後まで英語のセンテンスをしっかり言えないこともしばしばで。自信なさげな話し方に聞こえていたと思います。
安河内:しゃべりながら「あ、文法間違った!」と考えてしゃべれなくなってしまう。日本人に多いパターンですね。
Kaori:そうです! 常に「ホントはhad beenの過去完了形にすべきだった!」とか考えてパニックってました。もっと基本的な場面でも失敗の連続でした。たとえば、対応してくれた大学の事務員が女性だったとしますよね。「丁寧にお礼を言うとき男性に対してならThank you, sirだから女性の場合は……」なんてことを、頭の中で考えるわけですよ。で、Thank you, ma’am.って言ってみたら、「I’m a woman!(私は女よ!)」って激怒されたり。
安河内:女性に対する丁寧な呼びかけのma’amがmanに聞こえたんだ!
Kaori:かもしれないですね。そんな簡単なコミュニケーションにもつまずくほど苦労しました。
安河内:“受験英語ブレーキ”がかかりまくっていたんですね。
Kaori:そのとおりです。調べたことを授業で発表する時間がひとり10分あると聞けば、原稿を一から作って。それは大変でした。レポートのようなきっちりした原稿を書き上げるんです。I agree with○. I will tell you four reasons why I think like that way. First, ○○○. Secondly,○○○. In conclusion,○○○.というようなガチガチな内容でした。しかも、○○○の部分は、ウィキペディアなどいろんなところから論文の一節なんかを引用しまくりで。聞いているみんなは途中で飽きてしまってKaori, that’s enough.(もういいよ)的な空気がクラス中に流れて……。悲しい思い出です。
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