ジャパ発音やボキャ貧もテクで克服できる! コメディアンのKaoriさんから盗もう<1>

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安河内:1年間の留学だけだと日本人の場合、まだしゃべれないのが多数派ですよね。10人行ったら7人はまだしゃべれない、みたいな。アメリカで“負けて帰ってくる“純ジャパ”の典型例ですかね?

Kaori:はい。私も負け組です(笑)。留学前は1年で英語のスタンダップコメディーができたらなんて夢も描いていましたが、簡単な会話、発表でさえつまずいていましたから。ようやく少しずつしゃべれるようになってきたかな〜、というタイミングで帰国しました。戻ってきてからは、黒人の英語に慣れすぎて、白人の英語は聞き取れない事態に陥ったりもしました。

日本のお笑い芸人として出発

安河内:おお。まだかなり発展途上。というか、無茶苦茶な状態の英語力で帰国したんですね。帰国後は大学に戻ったんですよね?

Kaori:ええ。と同時にお笑い芸人としての活動もスタートさせたんです。最初は日本語でのお笑いでした。グループで「エンタの神様」などに出ました。でも、見事にすぐぽしゃりました。やってみて私は、グループではまったく機能しないことがわかりました。

そんなある日、上の人から「オマエ、あまりにもひどいから、ピンで前説やれ」って言われたんですね。そしたら割と受けたんです。次に「オマエ、お笑いをナメてるから独りでネタをやれ」と言われて。今思えば稚拙な、ひどいネタだったんですが、先輩から「芸人としての華がある。ピンのほうが絶対いい」って言ってもらえたんです。そこでピンでの模索が始まったんです。

ただ、日本のお笑いは好きだったし、ずっとやりたいことだったけど、いざその世界に入ってみると、口では説明できない違和感のようなものが消えませんでした。加えて、アメリカ留学を終えたときには、「いつか絶対アメリカに戻ってくる!」という野望も抱いた。いろんな葛藤が渦巻いていました。そこで「こんなカオス状態なんだし、興味のある英語のスタンダップコメディーにも一度とにかく挑戦してみよう!」と思ったんです。

安河内:英語のスタンダップはどこで?

Kaori:「standup comedy Japan」で検索したら、東京でやっている外国人のグループがいたんです。すぐにコンタクトをとって、渋谷、馬場などでのオープンマイクに参加しました。すると有名な日本のお笑い芸人さんも、次なるチャレンジという感じでスタンダップをやっていたんですね。日本人もいるんだと背中を後押しされました。で、いざ自分でやってみると、とってもしっくりきたんです。

安河内:英語でスタンダップをやるという方向性が見つかったんですね。

Kaori:はい。ただし、スタンダップに挑戦した当初は、留学当時の英語で始めていますから、「台本通り言わなくっちゃ!」というブレーキが再びかかりまくりでした。だんだん暗記するのも嫌になってきてしまって。しかも、完全に日本のお笑いっぽく作っていたので、外国人にはまったく受けなかったです。

安河内:日本語を英語に訳しただけでは受けなかったんだ。ちょっとやってみてもらってもいいですか?

Kaori:うわ! 受けなかったネタを披露するんですか? 細かくはもう覚えてないな〜。顔を黒塗りにしてM.C.ハマコというキャラを演じたりしてたんです。M.C. Hammerっぽいダンスで舞台に出ていって、音ネタを披露して。U can’t touch this!の歌詞のところに駄洒落的なラインを当てはめるという。売れる気配はまったくなくて……。

安河内:M.C.ハマコ、ダメだったんですね。

Kaori:はい。グループのリーダーだった外国人からも「日本のお笑いなんだよね〜」とダメ出し的なコメントでしたね。日本人に受けるネタだからと、そのまま英語に訳してもダメなんだとビシバシ感じる毎日でした。そこから徐々に“自然体”になりました。日本のお笑いは、非日常の作品を見せるタイプのものも多いですが、英語のスタンダップでは周りを見渡しても、ナチュラルな感じで構えずにしゃべっている。

「私の普段の会話でいいのかな?」と思えて、肩の力が抜けたんです。それで、こう言わなきゃ、ああ言わなきゃというとブレーキがかからなくなり、普段の会話っぽいしゃべりができるようになった。そこからは、日常で見聞きした面白いことを、自分なりの視点を交えて英語で伝えるようになりました。続けているうちに、どんな話が受けるか、受けないかがわかるようになった。受けるユーモアやロジックがつかめたことが、今のベースになっていますね。

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