こうした政策を採るのは、研究開発や企業の国際競争力にプラスの効果があると期待されるからだ。外国人が増えれば、日本人も刺激を受けるという波及効果も大きいとされる。そのとおりだと思う。
しかし、高度人材受け入れは自民党内閣当時の08年から推進しようとしていることだ。それにもかかわらず、医療分野での受け入れは、前回述べたような状況にとどまっているのである。
進まない理由はいくつかある。第1は、医師の場合に典型的に見られるように、国内の職業集団が受け入れにネガティブな姿勢を取っていることだ。そして第2は、日本人が外国人とともに生活する習慣を持っていないことだ。
こうしたことから、「受け入れ促進」を標榜しても、それを支える条件を整備できない。「仏作って魂入れず」とは、このことだ。
円高は観光客でなく専門家の来日を求めている
以上は日本国内から見た問題だが、いま一つ問題となるのは(外国人からすると、日本語の壁が高いことを別としても)、日本が外国の専門家を引きつける魅力を持っているかどうかという点だ。
前記日経の記事は、「経済の長期低迷から抜け出せない日本は、外国人から見て魅力的ではなくなりつつあるとの指摘もある。日本は単純労働者も含めて外国人受け入れに前向きではないとのイメージがあり、専門家受け入れ拡大を掲げる政府の思惑通りに進まない可能性も残る」としている。
日本の魅力低下は、日本への留学生について私も実感することだ。90年代には、大学院だけでなく学部にも留学生が来た。韓国だけでなく欧米諸国からも来た。彼らは日本語を勉強し、日本の企業に就職しようと考えたのである。しかし、今では欧米諸国からの学生はいなくなった。