「伊藤忠」高水準の利益を支える"現場主義"の本質 当期純利益は過去最高、その強さの秘密とは?

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伊藤忠の“らしさ”を言葉で表現しているのが、企業理念だ。実は、伊藤忠は2020年に企業理念を「三方よし」に改訂している。「三方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」を指す言葉であり、伊藤忠兵衛が「商売は菩薩の業、商売道の尊さは売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」と表現したことに由来する。

その思想を1988年、滋賀大学の名誉教授である小倉榮一郎氏が「三方よし」と著書に記した。伊藤忠の中では、近江商人の志を語るにあたり、「三方よし」が日常的に使われてきた。

「『三方よし』はSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)で謳っている17の開発目標と重なるところが多いのです。その意味で『三方よし』は、日本版SDGsと言ってもいいのかもしれません」(小林さん)

世の中の流れは、株主利益を追求することからステークホルダー全体の利益を生み出すこと、それによって社会全体の好循環を生み出すことへシフトしている。「三方よし」が語る思想は、まさに時代観と呼応している。

「時代が大きな転換期を迎える中、企業の根幹を支える理念の重要性が増しています。そういう時期になって、弊社の創業の精神である『三方よし』は貴重な財産と言え、未来に向けても十分に通用するという確信を抱き、改訂することにしたのです」(小林さん)

「らしさ」を際立たせるために創設されたCBI

その改訂に向けて、伊藤忠内で中心となって動いたのが小林さんだった。小林さんはCAOという全社の人事、総務、法務部門を統括する役割に加え、サステナビリティ推進部、CBI(Corporate Brand Initiative)という組織も統括している。

CBIとは耳慣れない言葉だが、「伊藤忠商事という企業の、イメージの構築と発信、いわば弊社のブランドマネジメントを行っている部署です」(小林さん)。

大半の企業において、イメージの構築や発信は広報部や宣伝部が担っている。総合商社はBtoBビジネスが主体ということもあり、さほど大きな力を入れてこなかった分野でもある。

だが、時代が企業に求める役割が、利益獲得による成長だけでなく、SDGsに象徴されるように、地球や社会とかかわりながら、確かな役割を果たしていく方向へとシフトしている。一方で、総合商社の役割は幅も奥行きもあるだけに、外部から見ていてわかりづらい。

そういう時代の風を受け、伊藤忠の“らしさ”を際立たせ、広く社会に知らしめていこうという意図のもと、組成された組織がCBIだという。

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