今の日本で人との「適切な距離感」が難しいワケ 「抑圧」と「自由」の間でどうバランスを取るか

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家族などの狭くて密接な関係になると、同調圧力が高まって抑圧が強くなる傾向もあります。それは文化でもありますが、息苦しさも生みます。そもそも学校でいじめが起きるのは、教室やクラスが極めて閉鎖的な空間だからです。

かと言って、共同体がまったくない社会は寂しくなります。属するところがなさすぎて、みんなが不安に駆られているのが現代です。

そして、インターネットの世界は広いはずなのに、共同反芻によって、密着してしまう人々が現れる。党派性、島宇宙、エコーチェンバーなどのキーワードがそれです。オープンなインターネットが失われている部分があるということです。

変えられるのは「自分の心」だけ

人と人との間の適切な距離が保てなくなると、イライラは増してしまいます。近すぎても、遠すぎても、頭の中のひとりごとが生まれてしまう。つまり、承認されることと、自由であることのバランスをどう保つかというところが、今の時代の難しさでしょう。

昭和の時代は、共同体があって終身雇用が良かったと懐かしむ人がいますが、そこには強い抑圧があった。今は、抑圧はないが、自由すぎて寂しい。ネット上には、別の抑圧が生まれている。人間はそのバランスのなかで常に振り子のように生きているのではないでしょうか。

最後は、マインドの問題しかありませんね。あらゆる問題がそうです。変えられるのは自分の心だけ。『Chatter(チャッター)』は、まさにそのことを示した1冊だと思います。

(構成/泉美木蘭)

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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