今の日本で人との「適切な距離感」が難しいワケ 「抑圧」と「自由」の間でどうバランスを取るか

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 最新
拡大
縮小

家族などの狭くて密接な関係になると、同調圧力が高まって抑圧が強くなる傾向もあります。それは文化でもありますが、息苦しさも生みます。そもそも学校でいじめが起きるのは、教室やクラスが極めて閉鎖的な空間だからです。

かと言って、共同体がまったくない社会は寂しくなります。属するところがなさすぎて、みんなが不安に駆られているのが現代です。

そして、インターネットの世界は広いはずなのに、共同反芻によって、密着してしまう人々が現れる。党派性、島宇宙、エコーチェンバーなどのキーワードがそれです。オープンなインターネットが失われている部分があるということです。

変えられるのは「自分の心」だけ

人と人との間の適切な距離が保てなくなると、イライラは増してしまいます。近すぎても、遠すぎても、頭の中のひとりごとが生まれてしまう。つまり、承認されることと、自由であることのバランスをどう保つかというところが、今の時代の難しさでしょう。

昭和の時代は、共同体があって終身雇用が良かったと懐かしむ人がいますが、そこには強い抑圧があった。今は、抑圧はないが、自由すぎて寂しい。ネット上には、別の抑圧が生まれている。人間はそのバランスのなかで常に振り子のように生きているのではないでしょうか。

最後は、マインドの問題しかありませんね。あらゆる問題がそうです。変えられるのは自分の心だけ。『Chatter(チャッター)』は、まさにそのことを示した1冊だと思います。

(構成/泉美木蘭)

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
Netflixが日本での「アニメ製作」を減らす事情
Netflixが日本での「アニメ製作」を減らす事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT