昨年の2014年も「2%の賃金上昇を達成した」という話題が、多くのメディアで取り上げられましたが、実のところ、日本全体では2014年の名目賃金は前年比で0.8%しか上昇していませんでした。そんななかで消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)が3.3%も上がったために、実質賃金は2.5%も下がってしまっていたわけです。
本来2014年は消費増税に耐えられる環境になかった
2014年の実質賃金の下げ幅はリーマンショックの影響を受けた2009年以来、過去2番目の大きさになっています。ちなみに、2013年の消費者物価指数は前年比で0.5%上昇したのに対し、名目賃金は0.0%とまったく伸びなかったために、その結果として、実質賃金は0.5%下がってしまっています。つまり、とても2014年4月の3%の増税に耐えられる環境ではなかったのです。
その一方で、前回の増税前にあたる1996年には、消費者物価指数が前年比で0.0%の伸びにとどまったのに対して、名目賃金は1.1%増えていました。
つまり、2013年とは異なり、実質賃金は1.1%増えていたので、家計は増税前に購買力を蓄えることができていたのです。
だから、1997年の4月の消費増税直後は、経済指標は悪くありませんでした。実際に、1997年4―6月期の家計消費は駆け込み需要の反動で減少しましたが、7-9月期には回復傾向が見られましたし、鉱工業生産指数やその他の主な経済指標も、夏頃までは堅調に推移していたのです。5月には日経平均株価も2万円台の大台を回復していましたし、増税の悪影響はほとんどなかったと考えられます。
その後、7月からのアジア通貨危機や11月からの金融システム危機により、経済指標は急激に悪化していくことになりましたが、少なくとも1997年の増税は、外部的要因がなければ失敗ではなかったわけです。
その時の状況をよく分析もせずに、単純に1997年と2014年の増税を同じケースとして括ってしまうのは、明らかに誤りで稚拙な考えです。
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