2つのケースではそれぞれ、実質賃金という重要な指標が真逆の方向を示していたのです。そして、そういう誤りをしているからこそ、政治家は政策を見誤り、経済識者は経済見通しを大きく外してしまうわけです。
国民目線で経済を見る場合に、実質賃金はとても重視すべき指標です。
政府の「経済の好循環実現に向けた政労使会議」における内閣府提出資料によると、デフレが本格化した2000年以降の実質賃金の推移は、名目賃金が年平均0.8%減、消費者物価指数が0.3%減とされています。
つまり2000年代に入ってからの日本の実質賃金は年平均で0.5%減少を続けているという計算になります。
ただし、名目賃金の下落のおよそ3分の2がアメリカの住宅バブルの崩壊と、その後のリーマンショックの影響であったことを考えると、実は日本の実質賃金は外部的な要因を除くと、2000年~2012年のデフレ期でほとんど下落していなかったことがわかります。
そして、4月に発刊になる『格差大国アメリカを追う日本のゆくえ』(朝日新聞出版)でも触れましたが、何よりも危惧すべきは、2012年末以降の第2次安倍政権誕生後の実質賃金の下落率や下落幅が2007~2009年の一連の金融危機のときに迫る勢いであったということです。
これが安倍政権誕生から2年以上が経った、日本経済の実態なのです。
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