日経新聞をはじめ、さまざまな経済メディアなどで、中国の「影の銀行」問題が、連日、取り上げられるようになってきています。そこで今回は、新刊『シェール革命後の世界勢力図』からの引用になりますが、今の中国経済・金融の実態について述べたいと思います。
李克強首相も信用していなかった?GDP統計
中国共産党の幹部たちが、家族と財産を国外に避難させているのは有名な話です。彼らは何を恐れているのでしょうか。これまで国民に隠してきた数々の「不都合な真実」を隠しきれなくなり、万が一の事態が生じた際には、身ひとつで逃げ出せるようにしているのではないでしょうか。
共産党政権が隠してきた真実の中でも最大級なのは、GDPに関するものです。現首相の李克強氏が遼寧省書記だった2007年、在中国のアメリカ大使にこう漏らしたことがあるそうです。「信用していいのは電力消費量、貨物輸送量、それに銀行融資の3つのデータだけだ。GDP統計は信用できず、割り引いて見なければいけない」と。
GDP統計が信用できないというのには、次のような事情があります。
中国の地方政府のトップは、各地区の共産党委員会書記が務めます。書記が共産党中央指導部入りするためには、地方政府で「実績」を挙げなければなりません。「実績」とは域内総生産(GDP)の成長率を上げることに尽きます。したがって、地方政府間で成長率を競う事態に陥りやすく、地方別のGDPデータはどうしても水増しされがちになるのです。こうした傾向は時に景気後退期に顕著になるようです。
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