中国の金融システム不安が再浮上している。中国のインターバンク市場金利であるSHIBOR(上海銀行間貸し手金利)が6月8日、一気に9%台まで急騰。直接の原因は、中国の中堅行である光大銀行(601818 CH)が興業銀行(601166 CH)に対して決済不能に陥った、とのうわさが前日に流れたことだ。ただ、うわさが流れた後も双方の銀行は通常どおり業務を継続していたようだから、中国の金融システムに根本的な異変が起きたわけではなかったとみてよい。しかし、それでも海外投資家の肝を冷やすには十分だった。
市場資金の逼迫の根本原因は何だったのか
インターバンク金利急騰の背景には、市場資金需給が逼迫したことがある。そして、その根本的な原因は何かと言えば、海外ホットマネーの流入に対して中国当局の対応が間に合わなかったため、ということになろう。つまり、4月まで人民元の上昇期待を背景に、大量に流入していた海外投機資金に対応して、当局が金融スタンスを引き締めぎみにしていたら、5月に入ってから一転して流入ピッチが減速(もしくは流出したかもしれない)。その結果、足元の市場資金が想像以上にタイトになってしまった、ということのようだ。人民元を狙った偽装輸出という資金流入があったことが今回の波乱の背景にあった。
実際、5月の中国の輸出は予想を大きく下振れた。前年同月比1%増の1兆1400億元となり、4月の14.7%増から急激に落ち込んだ。市場予想でも落ち込みは想定されていたが、4月の伸びの半分程度の7.4%増程度と予想されていた。急減した原因は、香港から貿易取引を装って投機資金を中国本土内に持ち込む「水増し輸出(偽装輸出)」に対する当局の取り締まり強化が影響したため。年初から4月までは、人民元高を見込んで為替市場でのサヤ取りを狙った貿易業者が偽装貿易で外貨を持ち込み、それが国内の流動性を押し上げていた。ところが、当局が規制を強化したため、そうした水増し分がすべて剥げ落ちてしまった。中国の金融当局はこうした動きに翻弄される格好となり、SHIBOR金利も異常水準まで上昇してしまったという流れとなった。正直、中国の金融システムは意外なほど脆弱だと言わざるをえない。
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