「今年に入ってから特に3月、4月は本当に忙しかったですよ。企業からの相談案件は全て中国からの撤退案件ばかり。この2カ月で2年間分くらい働いたのではないですかね」
九州・福岡にある有名モツ鍋屋の2階にある座敷。お世辞にも小ぎれいとは言えないが、いわく“福岡では三強の一つ”と言われるあっさり味のモツ鍋を頬張りながら、笑顔だが眼光鋭いその人物は語った。
中国から日本企業が続々と撤退へ
文字どおり裸一貫の叩き上げで、会計士ビジネスという階段を駆け上がってきた人物だ。とりわけ「中国ビジネス」というと福岡で知らぬ者はいない。情報は何も東京にだけあるわけではない。特に我が国経済の土台である中小企業によるアジアへの進出となると、東京よりも遥かにアジアに近いこの地・福岡に情報があふれている。「アジア・マーケットの今」を知りたくなると、私は福岡を訪れ、知遇を得た専門家の方々を訪ね歩くことにしている。
昨年来、日中関係は尖閣諸島問題で揺れに揺れている。大企業を中心に我が国財界は最初、「今度もたいしたことにはならないだろう」と高をくくっていたように思う。だが、その後の進展は全く違った。未曽有の反日デモが「官製デモ」として繰り返し行われる中で、「さすがに今回は違う」と気付き始めたのであろう。まだ余力のある企業から順番に続々と中国マーケットから撤退し始めている。
会計士であるこの専門家の方いわく、今年の株主総会においては「中国における拠点の維持」が一つの争点になることは間違いないのだという。「そんなに大きな拠点を中国で維持していて本当に大丈夫なのか」という質問が飛んできた時、明確な答えを出すことの出来る経営陣はほとんどいない。だからこそ本当に撤退するかどうかは別としても、その準備だけはしておこうと、会計士事務所の扉を叩く企業が後を絶たないのだそうだ。
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