かつて「プラザ合意」(1985年)の円高を受けても呆けたままであり、平成バブルの中、金融立国化を図らず、あやうく自滅しかけた(「平成バブル不況」)日本の二度轍を踏まないためには、中国に残された手段はただ一つ。徹底した金融規制緩和を行い、アジア、いや世界の金融センターとなるしかないのだ。
事実、中国は年限こそ入れていないものの「人民元改革」についてシナリオを公表しており、そうした中国を手伝うべく、英国や米国の銀行たちが続々と擦り寄ってきている。そう、「製造業から金融業へ」こそが、習近平政権が密かに実現しつつある大戦略なのだ。
日本は米中パワーゲームの中で「狭き道」を進むしかない
哀れなのは「円高少子高齢化」を理由に、今や恐ろしいほど内陸部にまで中国での拠点を構築してしまった我が国モノづくり系企業である。これらの企業の多くは低廉な労働力を利用して安く製品を造り、これを我が国国内へ送る、いわゆる「アウト・イン」というビジネス・モデルに依っている。しかし恐らくは2015年を目途に「金融中心への大転換」の名目の下、人民元の為替レートが完全に自由化し急騰すれば、人民元高・円安となり、もはやこのモデルは成り立たないどころか、巨額の損失すら招いてしまうのである。
「要するに、原田さんの言っている米中の大戦略が2015年に現実になってしまえば、我が社の中国にある生産拠点は赤字を垂れ流すことになるというわけですね」。冒頭に書いた福岡で会計士氏と共にモツ鍋をつついていた、モノづくり系中堅企業の社長氏がため息交じりでそうつぶやいたのが忘れられない。
だが、この大流から逃れることは我が国政府や大企業であっても、もはや不可能なのである。2015年に向けて進む米中の大戦略の中で食うか、それとも食われるか。「進むべき道はない。だが進まなければならない」という状況の中で今、私たち日本人全員のサバイバル・ゲームが始まっている。*5月(奈良)と6月(東京)に、原田氏の新刊記念講演会を行う予定です。くわしくはぜひ、こちらをご覧下さい。
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