通称「アベノミクス」をはやして、円安が進み株価が上昇した。米国経済の改善や景気後退が底打ちした観のある国内経済などがあって、アベノミクスだけが上昇相場の理由ではない。だが、「大胆な金融緩和」への期待が大きく作用したことは、間違いあるまい。企業業績は、円安を映して2013年度(来期)の予想ベースでは、今後大きく上方修正されることが期待されるが、ここまでのところでは、まだ顕著に回復したわけではない。
いまの相場は、2003年と1986年と似ている
総合的に見て、ここまでの株価の上昇は、株式市場用語でいうところの「金融相場」だ。
金融が緩和状態にあることで、株式市場に資金が向かい株価を押し上げる。金融緩和が一段と強化され、継続する、という見通しが、さらに株価を押し上げる。こういった流れだ。現状に似た時期を過去に探すと、2003年と1986年が思い浮かぶ。近いほうの、2003年から振り返ってみよう。
2003年は、日銀総裁が速水優氏から福井俊彦氏に交代して、量的緩和が一段と強化された年だ。量的緩和自体は速水総裁時代から導入されていたが、福井総裁になってこれを一気に拡大した。円高好き・インフレ嫌いのタカ派セントラルバンカーであった速水氏から、お金をばらまく「花咲かじいさん」的な明るいキャラクターの福井氏に総裁が交代したことの心理的な効果もあっただろう。公的資金によるりそな銀行救済をきっかけに、上昇相場が始まった。
しかし、その後、利上げを「勝ち」と考える日銀マンとしての功名心が福井氏に出たというべきか、サブプライム問題が忍び寄る中で、量的緩和を急速に巻き戻し、ゼロ金利解除に走って、それまでの政策効果を台無しにしたのはまだ記憶に新しいところだ。
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