バブルが起こる条件とは?
しかし、大きな前提条件として、「物価上昇率が2%を超えるまでは、誰も金融緩和をやめられない」。これは、黒田東彦氏でなく、市場が嫌ったとされる武藤敏郎氏がもし新総裁になったとしても同様だろう。
一方、バブルが起きる上で、金融緩和は「必要条件」だが、「必要十分条件」がそろうためには、質の悪い信用拡大につながる「リスクを過小評価させる仕掛け」が必要だ。
1980年代の日本のバブルでは、不動産をめぐる金融機関の融資競争とそれに伴う担保条件の緩和(土地の値上がりを見込んだ分まで担保になったケースがあるという)と、その背景にあった「土地神話」(日本の地価は下がらないという“神話”)が大きな役割を果たした。
株式市場では、財テク運用における「簿価分離」を可能にした特定金銭信託(通称「特金」)の登場と、特金やファンドトラスト(通称「ファントラ」)における運用で幅広く行われていた「握り」(暗黙の利回り保証)が投資家にリスクを誤認させた。さらに信用拡大(例えば「バックファイナンス付きファントラ」では、顧客企業が信託銀行から融資を受けて、ファントラを設定した)につながるチャネルがあった。
1988年当時、財テクに熱心だったある企業で、運用担当者が「当社は信託銀行の上客なので、信託銀行が『握り』の約束を果たさないことは考えられない。ファントラ運用は、リスクフリーだと認識している」と、堂々といっていたことを思い出す。
リーマンショックから金融危機に至った米国の不動産バブルでも、質の悪いローンのリスクを小さく見せかける「証券化」の金融技術がリスク過小評価と信用拡大のための“仕掛け”となった。
現時点で、次のブームの中核になる仕掛けはまだ見えていないが、エネルギー、環境ビジネス、インターネットビジネス、医療・介護ビジネスなど、成長ストーリーを重ねられる「バブルの種」候補はいくつもある。
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