シャドーバンキングの代表格、「信託」の実態は?
しかし、中国の金融システムの本当の病巣は、そうした枝葉末節ではなく、シャドーバンキングにある、との意見も根強い。中国のシャドーバンキングとは何か。通常、代表的なものとして「信託」が挙げられる。「信託」の市場規模拡大ペースは目を見張るものがあり、2013年第1四半期の残高は8兆7000億元となり、前年同期に比べて64%も増加した。2012年末と比べても、17%も成長している。
では、このように急拡大している「信託」とはいったいどういったビジネスなのだろうか。単純に図式化すれば、中国でおカネが有り余っている富裕層と、資金繰りに困っているインフラ産業や不動産デベロッパーとをマッチングさせるビジネスといえる。信託会社は、資金繰りに困っているとはいえ、信用度は決して低くない公共事業系のインフラ建設案件や、販売力や開発力のある不動産デベロッパーを探してきて、十数%以上の金利で資金提供を行う約束をする。同時に、手数料(2~3%分)を差し引いた9~10%程度の利回りの金融商品にパッケージし直して、富裕層に転売する。
こうした話だけを聞くと、非常に危なっかしい商品のように感じられるだろう。日本でこの手の高利回り商品は詐欺まがいのものである場合が多い。ところが中国の「信託」の場合はさにあらずで、結論から言えば信用度が非常に高く、市民権を得ているまっとうな金融商品である。
信用の裏付けは、まず信託会社が事業会社など資金の借り手に対して少なくとも調達金額の3倍以上の価値の担保を確保するところから始まる。担保となる不動産や財産の掛け目も非常に厳しい。一方で、顧客も選ばれた人々に限られる。投資額は最低でも1口20万~30万元(日本円にして314万~471万円、1元=15.7円以下同)が普通で、いい案件になれば1口200万元以上(同3140万円)などとなり、往々にして1件の案件に対して顧客が1人と言う場合もあるようだ。
利回りが高いからといって、誰でも信託の窓口に行って買えるようなものではなく、一見さんお断りの超富裕層向けサービスに特化しているのである。こうした担保至上主義ともいえる手堅いビジネスモデルのため、業界全体でもこれまでほとんどデフォルト(支払い不能)に陥ったことはない。案件によっては対象となるプロジェクトが順調に進まないことは当然ある。それでも分厚すぎるほど確保した担保により、期待利回りが確保できなかった例はあっても、最終的に顧客が損失を被ったというケースはまだ現実化したことはないと言われている。
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