3日目:割り切れる?「脳死→臓器提供」決断した家族の本音
4日目:夫から親から…生体腎移植を選んだ「家族の決意」
5日目:iPS細胞を駆使、実用化は近い?再生医療の最前線
2022年師走、先天性の重い心臓病を抱えた女児(1歳)がアメリカで心臓移植を受けるため、家族や支援団体らが募金活動を行っている様子をメディアが報じた。12日には目標額を達成したことを支援団体が発表したが、耳目を集めたのはその額の多さだ。その当時は円安ということもあって、治療費や渡航費などを合わせた額は5億3000万円。これだけの金額が3週間ほどで集まったという。
海外での臓器移植については、「イスタンブール宣言」が2008年に採択された。臓器提供や移植は自国の自給自足に務め、移植ツーリズムを禁止するといったことを盛り込んだルールだ。
小児の心臓移植に長年にわたって関わる千里金蘭大学学長の福嶌教偉(のりひで)さんは、「ヨーロッパやオーストラリアでは宣言に同意しているが、多国籍のアメリカやカナダではいまだに国外から移植希望者を受け入れている」と説明する。
手術技術が向上し、臓器の生着率も高い日本だが…
アメリカで心臓移植をする場合、患者の多くは補助人工心臓を付けていることから、1日の管理料が100~200万円。1カ月滞在するだけで6000万円かかる計算になる。
「費用の高さもさることながら、海外での移植は想像を超えるつらさです。関係ない人から叩かれ、渡航したら『なんで日本から来たんだ』という目で見られて、心も体も疲弊する。本当は日本で移植できるのがいいのです」(福嶌さん)
ドナー(臓器提供者)から提供された臓器を移植する移植医療。実際、日本ではめざましい発展を遂げている。手術の技術が向上し、拒絶反応を抑えるための免疫抑制薬の使い方が格段に進歩したことで、臓器の生着(移植者の体の中で機能すること)率も上がった。
日本臓器移植ネットワーク(JOT)によると、臓器移植後の5年生存率は心臓で93%、腎臓で91%、肝臓で84%、肺で74%にも上る。日本移植学会理事長の江川裕人さんは、「移植は前線復帰できる医療」と話す。にもかかわらず、なぜ日本で移植できないケースが出てくるのか。
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